今日もまた、
僕と萩野は桜さんと雪さんのライブに行く。
艶やかな黒髪に、白いブラウスと藤色のスカート。
今日も萩野は綺麗で、
僕は心の中でドキドキしていた。
「今日もまた萩野の作詞の曲?」
「そうだよ。 いや、今回めっちゃいいよ」
自信満々の萩野。
そんなにいい詞が書けたのか。
地下のライブハウス。
桜さんと雪さんは結構人気らしい。
女性客が多い。
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♩ 君のいない世界に なんの意味があるんだろう?
わからないけど わからないけど
今日も私はあなたのことを思いながら生きて行く
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淡い片想い、失恋の悲しさ、両想いの幸せ…
萩野の作詞は女子目線の恋愛を語っている。
それを歌う2人の声のハモリが綺麗で、繊細で。
2人が歌い終わった後、萩野が言った。
「失恋したらいい詞を作れるって残酷だよね」
複雑そうに彼女は笑った。
「確かにあの歌詞はグッときた」
「そう、ありが…」
不自然なタイミングで、萩野の声が途切れた。
彼女の目は桜さんを見ていた…いや、違う。
桜さんと一緒に話している男のことを見ていた。
僕には分かった。
きっと彼が萩野が忘れられない恋人なのだろう、と。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。