第11話

波乱の予感
72
2019/08/18 09:09
今日もまた、
僕と萩野は桜さんと雪さんのライブに行く。

艶やかな黒髪に、白いブラウスと藤色のスカート。

今日も萩野は綺麗で、
僕は心の中でドキドキしていた。


「今日もまた萩野の作詞の曲?」

「そうだよ。 いや、今回めっちゃいいよ」

自信満々の萩野。
そんなにいい詞が書けたのか。



地下のライブハウス。

桜さんと雪さんは結構人気らしい。
女性客が多い。

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♩ 君のいない世界に なんの意味があるんだろう?

わからないけど わからないけど

今日も私はあなたのことを思いながら生きて行く

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淡い片想い、失恋の悲しさ、両想いの幸せ…

萩野の作詞は女子目線の恋愛を語っている。
それを歌う2人の声のハモリが綺麗で、繊細で。


2人が歌い終わった後、萩野が言った。

「失恋したらいい詞を作れるって残酷だよね」

複雑そうに彼女は笑った。

「確かにあの歌詞はグッときた」

「そう、ありが…」

不自然なタイミングで、萩野の声が途切れた。


彼女の目は桜さんを見ていた…いや、違う。

桜さんと一緒に話している男のことを見ていた。





僕には分かった。
きっと彼が萩野が忘れられない恋人なのだろう、と。

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