第29話

scar
53
2019/10/21 13:07
「やっば!すげぇ寝てた、」




そう言って、四宮たまきは起き上がった。




「何時間寝てた?」






「10分だけだよ。」






ふざけて聞いてくる四宮たまきに私は冷静に答えた。





「ねぇ、今日の放課後一緒に帰ろうよー」




「いいけど、」


「じゃあ、校門で待ってて。放課後10分ぐらい用事があるから。」


「分かった。」




四宮たまきと話すようになってから、2ヶ月。
すっかり、私は四宮たまきのペースに慣れていた。




そして放課後、四宮たまきに言われたとおり、私は校門のところで待っていた。



最初はあんなに四宮たまきを嫌がっていたのに、正直にあいつを待っている自分を情けなく思う。




「らん?」


不意にその声が聞こえた。




四宮たまきの声ではない。




聞き覚えのある声。二度と聞くことはないと思っていた声。



私は、ふりかえってしまった。




その先にいたのは、私がいじめにあった原因の男。





二度と会いたくなかった人。






そして、私の好きだった人。





彼の名前は桜夜しずく。




全て終わったと思っていた。



四宮たまきに全てを話すことができて、解放されるのだと、心のどこかで期待していた。















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