「やっば!すげぇ寝てた、」
そう言って、四宮たまきは起き上がった。
「何時間寝てた?」
「10分だけだよ。」
ふざけて聞いてくる四宮たまきに私は冷静に答えた。
「ねぇ、今日の放課後一緒に帰ろうよー」
「いいけど、」
「じゃあ、校門で待ってて。放課後10分ぐらい用事があるから。」
「分かった。」
四宮たまきと話すようになってから、2ヶ月。
すっかり、私は四宮たまきのペースに慣れていた。
そして放課後、四宮たまきに言われたとおり、私は校門のところで待っていた。
最初はあんなに四宮たまきを嫌がっていたのに、正直にあいつを待っている自分を情けなく思う。
「らん?」
不意にその声が聞こえた。
四宮たまきの声ではない。
聞き覚えのある声。二度と聞くことはないと思っていた声。
私は、ふりかえってしまった。
その先にいたのは、私がいじめにあった原因の男。
二度と会いたくなかった人。
そして、私の好きだった人。
彼の名前は桜夜しずく。
全て終わったと思っていた。
四宮たまきに全てを話すことができて、解放されるのだと、心のどこかで期待していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!