「、、、何言ってんの、」
のうのうと私の前に急にあらわれて、おまけにこんなことを言っているこいつが信じられなかった。
すると、桜夜しずくが急に私のほうに寄ってきた。
私はそれに驚いて、とっさに逃げようとした。
けど、あっさり桜夜しずくに手をつかまれた。
「、、お願い、離してよ、」
桜夜しずくが憎くて仕方なかった。
そのまま壁に押し付けられた私は何も抵抗ができない。
「何してんの?」
少しだけ諦めかけていた時だった。
その声が聞こえたほうをむくと四宮たまきが立っていた。
「誰?」
桜夜しずくはそう言った。
それに答えず、四宮たまきは私たちのほうに歩いてきた。
「行こ。」
そう言って私の手をとってくれた。
それが気に入らなかったのか、桜夜しずくは言った。
「は?何?、、まさか彼氏?」
「だったら何?」
四宮たまきはそれに答えた。
「ふーん。じゃあさ、俺たちの間に何があったか知ってる?知らないならさ、教えてやろうか?」
その桜夜しずくの声に私は恐怖を感じていた。
そんな声も聞かずに四宮たまきは私の手をとったまま歩きだした。
そして、
驚いたように立っていた桜夜しずくに四宮たまきは振り返って言った。
「今度、らんの前にあらわれたらぶっ殺すよ。」
こんな冷たい顔をした四宮たまきは初めて見た。
少し無言のまま歩き続けた後、私は
「ありがと。」
とすごく小さな声で言った。震える声を抑えて。
すると、四宮たまきは何も言わないまま、私をゆっくりと抱きしめた。
「ああいう事があるとさ、また無性に死にたくなるんだよね。」
抱きしめられたまま私はそう言った。
それでも何も言わずに私を抱きしめ続ける四宮たまきの手は
何だか少し震えていたような気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。