その一言を聞いて頭の中に彼の最期が、鮮明に映し出された。
およそ100年前…
彼とは違って、私は恋愛表現はしなかったし、そもそもする必要は無いと思ってた。
けれど、私は彼を愛していたし、彼も愛してくれていた。
だから自分の手で殺した時の想いは何にも耐え難い程の苦痛だった
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したり顔でほくそ笑む父の姿は、なんとも不気味で胸騒ぎがした
そう、婚約者のアドーニスは神の中でも1番の厄介者冥界神の一人息子
誰にも言わず密かに交際を続けていた私たちは、2人で会うのも憚られるため、会う時は秘密裏に行っていた
彼に今日、最高神ゼウスに言われた内容を手短に話した
綺麗な瞳を閉じて、彼は呟く様に言った
彼の意志は固く、
選択肢は、もう、一択だけだった。
そして半刻後、
皆が観る中、私は彼の首を落とした。
首を落とした後、最高神が何か言っていた様な気がするが、その後からは全くと言っていい程記憶が曖昧で覚えていない。
ひとつ覚えているのは、最後に彼に向かって私が紅のアネモネを捧げた事ぐらい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。