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第3話

鮮血と少女と初仕事
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2019/09/16 12:37
未無月栞
未無月栞
み、未無月栞です。
16歳です。
先輩方の足を引っ張らないよう、精進してゆきたいと思います。
宜しくお願いします!
時は移り探偵社にて。
僕ー中島敦は、ぺこりと頭を下げる栞を見て、何故だか違和感が頭を離れなかった。
パチパチと響く拍手の中、少し頬を染めて再び頭を下げる栞の姿に、気のせいかと首を傾げる。
福沢諭吉
福沢諭吉
栞は、敦と鏡花に預ける。
いいな?
中島敦
中島敦
はい!
泉鏡花
泉鏡花
はい
社長が出て行き、国木田さんが口を開く。
国木田独歩
国木田独歩
今日は仕事が少ないからといって、
担当のものが終わらないなんてことがないようにな!
はーいとかへーいとか適当な声と共に解散する探偵社1行。

未無月栞
未無月栞
あ、あの、敦先輩、鏡花ちゃん、
宜しくお願いします!
中島敦
中島敦
宜しくね!
泉鏡花
泉鏡花
よろしく、栞
国木田独歩
国木田独歩
敦、鏡花、栞!
お前らには少し大変な仕事がある。
気を引き締めろよ!
未無月栞
未無月栞
…初…仕事…!
栞の目がキラキラと輝いている。
中島敦
中島敦
あ、先週言っていたやつですね!
栞と鏡花ちゃんと僕の3人で鏡花ちゃんの持つ資料を覗き込む。
未無月栞
未無月栞
異能力者…連続失踪殺人事件…?
資料の文字をそのまま読む栞。
泉鏡花
泉鏡花
最近、異能力者が失踪して殺される事件が多発しているらしい
国木田独歩
国木田独歩
そうだ。
これは軍警からの依頼だ、
頑張れよ
そう言って国木田さんが自分の席に戻る。
未無月栞
未無月栞
1番最近の事件の現場は…
ゆ、遊園地…っ?
鏡花ちゃん、遊園地だって…!
泉鏡花
泉鏡花
遊園地…!
2人の目がキラキラしている。
未無月栞
未無月栞
敦先輩!
栞がくるりと顔をこちらに向ける。
これは、やっぱり。
未無月栞
未無月栞
遊園地へ、
調査に行きましょう!!




というわけで。







未無月栞
未無月栞
わーっ!
遊園地ですよ敦先輩!
泉鏡花
泉鏡花
遊園地…!
栞、あれ乗ってみよう
中島敦
中島敦
ちょ、ちょっと待って2人とも!
調査が先だよ!
未無月栞
未無月栞
…仕方ないですね
やれやれというふうに息をつき、目を見開いた。
未無月栞
未無月栞
じゃあすぐに終わらせて、
あれに乗りましょうっ!!!
泉鏡花
泉鏡花
賛成。絶対あれに乗ろう
2人はジェットコースターを見て、頷きあう。
未無月栞
未無月栞
早く行きましょうっ!!
泉鏡花
泉鏡花
早くしないと置いていく
中島敦
中島敦
ええ…
2人は僕を置いて駆け出して行く。
2人に謎の連帯感がある。
まあ仲がいいのはいいことだけど……。





そういえば。

中島敦
中島敦
あの…栞ちゃんって、異能力とかって知ってるの?
事件現場の遊園地の片隅へ向かう途中、栞に聞く。
異能力を知っているようには見えないのだが……。
未無月栞
未無月栞
知ってますよ。
何しろ私も持っていますし
中島敦
中島敦
え、そうなの?
泉鏡花
泉鏡花
どんな異能力なの?
鏡花ちゃんが目をキラキラと輝かせる。
興味津々だった。
未無月栞
未無月栞
いやそんな大したものじゃなくて…。
あんまり役に立つ異能じゃありません
えへへと頭を掻いて苦笑する栞。
あんまり触れられたくはなさそうだった。
不意に栞が鏡花ちゃんの手にある資料を覗き込む。
未無月栞
未無月栞
…え、遊園地で2つも事件あったんですか?
泉鏡花
泉鏡花
そうみたい
未無月栞
未無月栞
2つの現場離れてますし、分かれた方がいいのでは?
栞が敦を振り仰ぐ。
中島敦
中島敦
じゃあ、西門側ー今向かっていた方と、東門側ー僕らの反対側方面で分かれようか
未無月栞
未無月栞
あ、私東門側行きます!
2人は西門に行っていてください!
泉鏡花
泉鏡花
1人で大丈夫?
未無月栞
未無月栞
うん!私、そこそこ強いんだから
ふふーんと誇らしげに胸を張る栞。
じゃあ、多分大丈夫だろう。
未無月栞
未無月栞
では、そちらも頑張って下さい!
敦先輩、鏡花ちゃん!
泉鏡花
泉鏡花
うん
中島敦
中島敦
うん!






東門の休憩スペースへ着き、人がいないことを、何気なく確認して、栞が南門へと目を向ける。







その瞬間、栞は東門側の休憩スペースのような場所からーー消えた。


そして、次の瞬間。
栞は、南門側の休憩スペースへと移動していた。




ルミナ
ルミナ
栞様!
時雨
時雨
栞ーっ!
南門側の休憩スペースへと着いた途端にかかった2つの声。
金髪の少女。
茶髪の少女。
私は深く深く溜息をつく。
未無月栞
未無月栞
五月蝿いですよ、ルミナ、時雨しぐれ
ルミナ
ルミナ
申し訳ありません、栞様……
時雨
時雨
栞ごめーん
茶色の髪を、ツインテールに結んだ、可憐な容姿の少女ー時雨が、手を合わせて軽ーく謝るのを見た、もう1人の少女が。
ルミナ
ルミナ
時雨、栞様に対しての軽率な発言は控えるように、と何度も注意していますよね?それと栞様を呼び捨てにするなと…
時雨
時雨
えー聞こえなーい。
時雨のうるさい声なんて聞こえなーい
時雨が両耳を両手で押さえて答える。
生真面目な性格の、金髪の少女ールミナが目の端を吊り上げる。
ルミナは片目を前髪で隠し、綺麗な金髪を2つ結びにしている。
尚、私達3人は、全員、メイド服のような格好で、なるほどよく目立つ。
まあ遊園地だから案外マッチしている…のか?
いや、そんなことはどうでもいい。
私は小さく頭を振って2人を見据える。


冷徹で酷薄な。
異名の『死神』の名に恥じぬ。
硬質で無機質な視線。
未無月栞
未無月栞
ーさて、仕事の時間です。
…ルミナ、時雨
ルミナ
ルミナ
はっ
時雨
時雨
はいはーい
未無月栞
未無月栞
…と、邪魔者がいるようですね
私は曲がり角を振り仰ぐ。
曲がり角の向こう、身を強張らせた1人。
…1人か。私に着いてきたのを見る限り異能力者か。
……つまらない。
ルミナ
ルミナ
もう少し手の込んだ尾行を期待していましたが
時雨
時雨
所詮はそんなもんってことよ
ルミナ
ルミナ
ポートマフィア…でしょうか、栞様
ルミナがちらりと視線を向けてくる。
未無月栞
未無月栞
おそらくは。
……ああ、見覚えがあると思ったら、前、私に殺されかけた男ですね
時雨
時雨
……ああ、確かにそうかも。
栞、記憶力良すぎでしょ
ルミナ
ルミナ
栞様、私が駆除しましょうか?
時雨
時雨
いーや私が殺るわ!
未無月栞
未無月栞
あ、どっちでもいいです。
というかどうでもいいです。
とりあえず五月蝿いです黙って
ルミナ
ルミナ
……御意ぎょい
時雨
時雨
…ハイ
未無月栞
未無月栞
よろしい
跪く2人。
威圧しすぎたのかもしれない。
……まあ、いいか。
未無月栞
未無月栞
ーさて
思いっきり蚊帳の外だった不審な男A。
視線を向けると、後退っている。
情けない。
ポートマフィアの一員、それも異能力保持者が。






まあ、しょうがない。
そうなるようにと言ったのはー姉さんだから。


私を始末しに来たくせに、逃げ腰になっている男を溜息と共に見やり、そして云う。
未無月栞
未無月栞
私が始末します。
ルミナ、時雨、見ていなさい
ルミナ
ルミナ
時雨
時雨
了解
私は、男へと向き直りー
未無月栞
未無月栞
異能力ー『終焉しゅうえん日和びより




閃光。








眩い輝きに視界を潰された男は、次の瞬間。
おそらく、何が起こったかも分からずに。
自分の血のあかいろに染まっていた。




我は死神。
人ならざる者。





小さくそう呟く。






姉さん。
私はーー





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