時は移り探偵社にて。
僕ー中島敦は、ぺこりと頭を下げる栞を見て、何故だか違和感が頭を離れなかった。
パチパチと響く拍手の中、少し頬を染めて再び頭を下げる栞の姿に、気のせいかと首を傾げる。
社長が出て行き、国木田さんが口を開く。
はーいとかへーいとか適当な声と共に解散する探偵社1行。
栞の目がキラキラと輝いている。
栞と鏡花ちゃんと僕の3人で鏡花ちゃんの持つ資料を覗き込む。
資料の文字をそのまま読む栞。
そう言って国木田さんが自分の席に戻る。
2人の目がキラキラしている。
栞がくるりと顔をこちらに向ける。
これは、やっぱり。
というわけで。
やれやれというふうに息をつき、目を見開いた。
2人はジェットコースターを見て、頷きあう。
2人は僕を置いて駆け出して行く。
2人に謎の連帯感がある。
まあ仲がいいのはいいことだけど……。
そういえば。
事件現場の遊園地の片隅へ向かう途中、栞に聞く。
異能力を知っているようには見えないのだが……。
鏡花ちゃんが目をキラキラと輝かせる。
興味津々だった。
えへへと頭を掻いて苦笑する栞。
あんまり触れられたくはなさそうだった。
不意に栞が鏡花ちゃんの手にある資料を覗き込む。
栞が敦を振り仰ぐ。
ふふーんと誇らしげに胸を張る栞。
じゃあ、多分大丈夫だろう。
東門の休憩スペースへ着き、人がいないことを、何気なく確認して、栞が南門へと目を向ける。
その瞬間、栞は東門側の休憩スペースのような場所からーー消えた。
そして、次の瞬間。
栞は、南門側の休憩スペースへと移動していた。
南門側の休憩スペースへと着いた途端にかかった2つの声。
金髪の少女。
茶髪の少女。
私は深く深く溜息をつく。
茶色の髪を、ツインテールに結んだ、可憐な容姿の少女ー時雨が、手を合わせて軽ーく謝るのを見た、もう1人の少女が。
時雨が両耳を両手で押さえて答える。
生真面目な性格の、金髪の少女ールミナが目の端を吊り上げる。
ルミナは片目を前髪で隠し、綺麗な金髪を2つ結びにしている。
尚、私達3人は、全員、メイド服のような格好で、なるほどよく目立つ。
まあ遊園地だから案外マッチしている…のか?
いや、そんなことはどうでもいい。
私は小さく頭を振って2人を見据える。
冷徹で酷薄な。
異名の『死神』の名に恥じぬ。
硬質で無機質な視線。
私は曲がり角を振り仰ぐ。
曲がり角の向こう、身を強張らせた1人。
…1人か。私に着いてきたのを見る限り異能力者か。
……つまらない。
ルミナがちらりと視線を向けてくる。
跪く2人。
威圧しすぎたのかもしれない。
……まあ、いいか。
思いっきり蚊帳の外だった不審な男A。
視線を向けると、後退っている。
情けない。
ポートマフィアの一員、それも異能力保持者が。
まあ、しょうがない。
そうなるようにと言ったのはー姉さんだから。
私を始末しに来たくせに、逃げ腰になっている男を溜息と共に見やり、そして云う。
私は、男へと向き直りー
閃光。
眩い輝きに視界を潰された男は、次の瞬間。
おそらく、何が起こったかも分からずに。
自分の血のあかいろに染まっていた。
我は死神。
人ならざる者。
小さくそう呟く。
姉さん。
私はーー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!