第7話

第2話「相手の幸せ」前編
42
2021/09/04 09:00
最悪だ。駅前で伽耶と出くわしてしまった。彼女は俺がいつもこのくらいに最寄り駅に戻って来ることを知っているので、どうやら待ち伏せていたみたいだ。

「チッ!」

と、俺の目の前に駆け寄ってきた伽耶に舌打ちをした。

「優雅ー!昨日はごめんねぇ!」

は?何を呑気なこと言ってんだ。そんなふうに手を合わせて平謝りされても困る。俺は伽耶の事を鋭い目付きで睨み、

「退けよ。邪魔」

と言った。

「ねぇ!本当にごめんってぇ!!」

伽耶は俺の腕にしがみついてきた。でも俺はそんな伽耶を思い切り振り払った。

「ふざけんな!いい加減にしろ!お前の事はもう信用出来ねぇ。帰れ!」

「お願いー!!優雅ー!!」

振り払ったっていうのに、伽耶はまだ俺の腕にくっつこうとする。

「邪魔だって言ってんだろ!!」

俺はカバンをビュンと振り回し、彼女の体に当てた。それにぶつかった彼女はよろけて地面に倒れそうになった。

「ちょっと!危ないじゃん!!」

伽耶はそう言ってムッとした顔を向けてきた。なので俺はこう言い返した。

「は!?これ以上の危ない目に俺を遭わせておいて、よくそんな事言えるなぁ。ナメてんのか?あ?」

歯を食いしばり、必死で殴りたい気持ちを抑えた。女を殴ったらこっちの負けだ。それに、何かあって警察沙汰にでもなれば、うちの部員たちに迷惑を掛ける事にもなるかもしれない。

「消えてくんねぇ?もう二度と俺の前に現れんな」

伽耶はなんとも言えない悔しそうで且つ寂しそうな目で俺を見つめていた。

伽耶の目的はなんだ?

俺とまたしたくなったとか?

要するに暇つぶしでここに来たのか?


したいだけなら、いくらでも遊んでやるよ。




「お前、俺としたいが為に会いに来たんだろ。だったら彼氏に後でめちゃくちゃに怒られるくらいに男と遊んできたって証拠を残してやるよ」

そうだ。


やるだけやって、最後は捨ててしまえばいい。


「え!?ちょっと…優雅!!」

俺は強引に伽耶を近くの公園にある公衆トイレにぶち込み、そこで伽耶を襲った。

お前の望みはこれだろ??

俺の体目当てだろ??

俺は伽耶の服を脱がし、下着の上から胸を握る。

でも、今日の伽耶は全然俺を受け入れない。



それどころか伽耶が泣いてしまったのだ。




「優雅、ごめん……。本当にごめん……。私、昨日は防衛反応でつい……」


畜生。俺もアホだ。こんなクズ女の涙になんか同情しないでこのまま襲い続けりゃ良いってのに、

これ以上は彼女に手を出す事が出来なくなった。

伽耶は顔を覆って泣き始めた。

頼む。頼むから目の前で泣くのはやめてくれ。


俺は伽耶から目を逸らした。


すると伽耶は俺に


「私の話、聞いてくれる……?」

と尋ねてきた。

きっと、どうせしょうもない言い分なんだろう。そうである事は間違いないけど、目の前で泣かれたらもうダメだ。俺はもう首を縦に振ることしか出来なかった。


服を整え、公衆トイレを出て2人でベンチで話す事になった。伽耶は口を開いた。


「丞とは、付き合って半年が経つの。友達伝いで出会って付き合い出したんだけど、最近向こうの仕事量が増えちゃって、まともに会えてなくてさ。本当に月に何度かご飯行くくらいだけになっちゃって、この人…私の事好きなのかな?なんて思うようになっちゃったの」

「……で?」

伽耶の目も見ずに冷たく遇う俺。伽耶は続けた。

「そんな時にインスタで優雅を見つけたの。」

「え?」

「めちゃくちゃタイプだったし、趣味も合いそうだし、会ってみたいなって。DM待ってます!とか書いてあったからさ、出来心でDM送ってみたら返ってきて。会ったら会ったですぐにそういう方向に持っていかれたから、あぁ、この人はただセフレを求めてただけなのかーって。それは最初の段階でもう分かってた」


そう。俺達の出会いのきっかけは、伽耶からのインスタでのDM。俺としても可愛いギャルの子からDM来てラッキー♪って思った。だから俺も会いたいって思って、すぐに会う方向になったのだ。


「でも優雅は最近の丞以上に私の事ドキドキさせてくれたし、正直丞としてる時よりも幸せな気持ちになれてね……。まぁ、私だけにこういう事してる訳じゃないんだろうなって言うのは分かってたから、私も優雅の事はセフレとして見てたんだけど、だんだんそうじゃなくなっていってる自分がいたの。優雅の事、好きになりかけてた。だから私は優雅の事好きになったら負けだ!って自分に言い聞かせた。会わなきゃ良い話なのにさ、なのについ会いたくなっちゃうの」

意外だった。

俺としても、伽耶は俺の事をそういう目でしか見てないもんだと思っていたから。

伽耶の言葉に驚いた俺は、視線の先を伽耶の方にやった。

伽耶は僅かに涙を流しながら続けた。

「でも昨日、丞に優雅と一緒に居るところ見られちゃって、急に怖くなった。私、丞の事好きなのに、優雅との関係がバレちゃったら丞にも嫌われちゃうだろうし、丞って強面でしかも喧嘩も強いような人だから、万が一優雅とのセフレ関係がバレでもしたら、丞にマジギレされて暴力振るわれるかもしれないっていう不安が一気に押し寄せてきてね。それで……あんな事言っちゃって」

すると伽耶は俺に頭を下げてきた。

「優雅、本当にごめんなさい」


なるほど、状況は理解した。


解決法はただ1つ。


伽耶とはもう会わないこと。


そうすればこの問題は解決出来る。


セフレ1人減ろうがどうって事ない。


また探せばいいし。









………とかイキってる場合じゃない。







これは本当に、伽耶の為にももう彼女に会うべきじゃない。そう思った。

俺と伽耶はただのセフレだし、

その今の彼氏の事を伽耶はまだ好きだと言っている訳だ。

だったら、いつか彼氏にバレるかもしれない俺との関係を持ち続けたまま彼女に日常を過ごさせるのは違う。

だから俺は伽耶の顔を見て、


「伽耶。俺達、もう今日で会うのはやめにしよう。」

と言った。



To be continued!!
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