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第9話

第3話 前編
58
2022/02/18 09:24
2022年初更新!
今年もよろしくお願い致します🙇‍♀️←おっそ💦


すみません、書き溜めてたお話があって
だいぶ止めてたので少し更新します!

またお付き合いくださいませ!



「優雅ー!久しぶり!」



そのもう1人というのは、





純理のことだった。



第3話「抜け出せない沼」


「ひ、久しぶりってお前……。1ヶ月くらい前に店であったじゃんよ」

ここでいう店というのは、純理のバイト先のスポーツ用品店の事。俺の家から自転車で行けるような所に位置してるので、元からその店を利用していたのだ。今でも新しいスパイクを買うとか、スポーツドリンクやプロテインをまとめ買いする時とか、何かしら用があればその店に立ち寄っては買い物をしている。

「ん?そういえばそうだったかもね!てか、1ヶ月って久しぶりに入らないの?」

と純理が斜め向かいに座る広夢と、隣に座る安藤先輩に問いかけた。

「えぇ!?入らないんじゃないかな?」

と安藤先輩。

「うーん、微妙な所だね」

と広夢。そんな3人に俺は問う。


「あのー、座っていいすかね?」


「おお!ごめんごめん!座って!」

と、広夢が自分の隣に座るように促してきた。ていうかハンバーグ屋って…。絶対店のチョイス広夢だろ、と思った。

他のみんなは注文済みって事だったので、俺の分の注文も終わらせた。

それからは、みんなの最近の近況について話をした。その中で、雅先輩の話も出て来た。

「は!?9月16日!?もう過ぎてるじゃん!!純理、なんで教えてくんないんだよ雅先輩の誕生日を!!」

「いやあ、LINEの誕生日の所タップしたら出てくるじゃない!てっきり知ってると思ったよ!」

「知らん!そんな機能!」

「え、意外」

雅先輩の誕生日の事を聞いて、慌てて雅先輩とのLINEのトーク画面を開く俺。そして早速、

「純理から聞きました!遅れちゃったんすけど誕生日おめでとうございます!」

と雅先輩に送った。そんな所を見て、

「優雅くんって雅くんと仲良かったっけ?」

と安藤先輩が聞いてきた。

「最近はこんな感じっすよ!LINEはあんまりしませんけど、7月に雅先輩が帰ってきた時も会いましたよ」

「へえ!そうだったの!その時は何して遊んだの!?」

「遊んだっつーか、まあその時は2人でラーメン食って、その後雅先輩の家に行きましたよ」

と答えると、

「え、家行ったんだ!?」

と広夢に驚かれた。

「んだよ。悪いかよ」

「そうじゃなくてさ、最初は雅の事めちゃくちゃ嫌ってたくせに、関係値が凄く変わったなって所に驚いたんだよ!」

なんて、雅先輩の話をしていると会いたくなってくる。でも、俺以上に会いたいのは純理か。雅先輩がパリに発ったのは今年の3月。半年以上が経ったけど、純理は慣れたのだろうか。

その辺も聞いてみると、

「うーん、慣れてはきたけど、会えるんなら会いたいよね」

という返事が来た。

「あぁ……。数ヶ月に1回しか会えないって寂しいよね……」

と、安藤先輩。それに対して純理は、

「そうだねー。でも、雅も資格取るためにパリに行った訳だから、行ったからにはちゃんと無事に資格取って帰って来いよ?って感じ」

と言った。もう、完全に割り切れていた純理が強いなと思った俺は、率直な気持ちを彼女に伝えた。

「純理って強いよな」

そしたら純理は言った。



「ううん。強くないよ。私はただ、“強くなった”だけ」




それってつまり……?





結局、広夢と2人じゃ無かった事もあり、伽耶の話を出すのはやめた俺。広夢は彼女である安藤先輩を送ると言って駅で別れた。残された純理と俺はそのまま駅で解散しそうになったのだけど、

「純理、俺も送るよ」

特に意味もなく、自分から送ると純理に伝えてしまった。


そこでさっきの話をもう一度触れた。

「純理、あのさ…」

「んー?」

今は純理の家の最寄り駅に着き、帰り道の商店街を2人で歩いている。

「さっきのさぁ、“強くなっただけ”ってどういう事?」

と問い掛けると、純理はとあるお店に目をやってこう言った。

「あそこにたい焼き屋さんあるでしょ?今は時間帯的に閉まってるけど」

「……え?たい焼き屋?ん、あぁ。あるね」

「あのたい焼き屋さんでね、たまに雅と2人で帰りに買い食いしてさ、少し先の公園のベンチに座って一緒に食べたりしてたんだよね」

「……そうなんだ」

何故純理がたい焼き屋の話をしたのかは、次の彼女の言葉で分かった。

「ここ通るとだいたい、毎日って訳じゃないけどその時の事を思い出すんだよね。その度に会いたいなって思ってる。私、前より強くなったってだけで、元は全然よ。強くなんかないの」

そういう事か。

純理そのものが元から強いって事ではないってことか。

そうじゃん。

純理は雅先輩と付き合う前だって、雅先輩の亡くなった元カノの事で、どう向き合ったら良いのかって酷く悩んでたりしてたじゃん。

「でも、雅は忙しくとも『時間は作るものだから!』って言って、毎日何かしら連絡くれるし、ビデオ通話だって、製パン学校始まった今でも週に1度は必ずしてくれる。タブレットの中の雅に話すことしか出来ないのは寂しいっちゃ寂しいけど、そうやって離れてても私と繋がろうとしてくれる誠意を雅は見せてくれるから、だから不安はだいぶ軽減されたんだ」

と言って、彼女は俺に笑いかけてくれた。

彼女の可愛らしい癒しの笑顔に、俺はキュンとしてしまった。

やっぱり純理は可愛い。

雅先輩が居ない間は、この笑顔を俺や広夢達でしっかり守っていきたい。

「そっか、さすが雅先輩だわ。マジ神対応やん」

「ホント。しっかりしてるなぁっていつも思うよ」

だから俺は純理にこう言った。



「なぁ純理。でも、少しでも辛くなったりしたら、俺に言ってね」



「え?」



「雅先輩の代わりにはなれないけどさ、暇つぶしとか全然付き合うから、何かあったらいつでも連絡してな」


「暇つぶし?」

と首を傾げる純理。

「あぁ……その、要するにあれよ。例えば、純理が1人で家で暇してて、妙に雅先輩の事ばっか考えちゃってどうしようもない日があったりしたら、そういう時の暇つぶしに俺で良ければ使ってねって事」


いつになく緊張して、たどたどしい感じに伝えてしまった俺。そんな俺を見て純理は笑って、

「かっこつけちゃって。バーカ!でも、ありがとう」

そう言って俺の頭を撫でた。

「弟扱いすんなバーカ」

俺も純理の頭を撫で返し、

「こうしてお互い私服で歩いてりゃ、俺達タメ同士に見られるかもな」

と言った。そしたら純理はあどけなく笑って、

「確かに私服だったら優雅、大学生って言われても違和感無いかもね」

と返してきてくれた。

これは、大人っぽくなったって捉えても良いのか?

「マジ!?ねぇ、1回だけ俺に『優雅先輩』って言ってみてよ!」

と、彼女の腕を掴んで提案してみると、

「そーゆーところはガキだけどね!」

と言われて笑われてしまった。

「るっっせ。早く!」

俺が催促すると、純理はちょっと恥ずかしそうに、

「うーん、優雅先輩?」

と言ってみてくれた。照れてる純理が可愛くて、心臓の脈を速めた。俺はそんな純理に微笑み、

「ふっ。何今の。可愛い」

と言って再度頭を撫でた。

「ほれ、行くぞ」

「ちょっと!!言わせといて何!?今絶対鼻で笑ったでしょ!!」

「笑ってねーよバーカ!!」


久しぶりに純理との2人の時間を過ごした俺は、家に帰った後に部屋でため息をついた。



「畜生。マジ可愛い」



雅先輩の事もあるから純理に手を出す気は絶対に無いけど、やっぱり純理は俺にとっての天使だ。本当に可愛い。


もう、大好きだ。


でも、いつまでも純理が可愛いとか、そんな事言って舞い上がってる場合じゃない。


純理の事はとっくに諦めてるんだ。広夢の言うように、誰かのたった1人の特別な人とやらになるべきだし、俺自身もそういう人を作れるように努力しなきゃいけないんだろうけど、

まだ、どうもそんな気になれない。

だから結局今日も、“純理を抱けない代わりに”純理に少し似ている彩舞を抱いた。


「優雅……あっ!!今日、いつもより激しくない!?」

「るっっせ。黙って俺に抱かれてろ」

「あぁぁ!!!」

誰も居ない体育館の舞台袖。

そんな所で胸を露にする彩舞はめちゃくちゃ可愛い。

そんな彩舞の胸をしゃぶり、そして、彼女と1つになる俺。

「彩舞……可愛いよ」

と耳元で言うと、その言葉の嬉しさと耳元の弱さから、体を僅かに震わす彩舞。で、それだけでもちょっと喘いじゃうもんだから、俺も興奮してしまう。

「彩舞ってホント感じやすいのな。可愛い…。マジ可愛いわ彩舞」

ダメだ。


こんなに目の前で彩舞が感じてくれてるって言うのに、



そんな彩舞が時々純理に見えてしまう。






なぁ、俺。





今まで見て見ぬふりしてたんだろうけど、







お前、本当はまだ純理への気持ち、完全に抜けきれてないんだろ。





いい加減彼女を想うのはやめろよ。






純理は雅先輩のものだ。





雅先輩は純理を愛してて、




純理は雅先輩を愛してる。



純理が俺の物になる事は一生ない。



そんな事とっくに分かってるだろ??



だからさ、




いつまでも純理の事を好きな自分に縋ってないで、



いい加減に本当の意味で前に進んでくれよ。





純理に似てる彩舞とこんな関係持ったって、何の意味もないぞ。





「優雅、好き…!!大好き!!」


そろそろ、彩舞には言わないとな。


こんな関係やめようって。






そんなフワフワした状態で部活に臨んでしまった俺はこの日、足首を捻挫してしまった。







続く

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