俺は伽耶の顔を見て、
「伽耶。俺達、もう今日で会うのはやめにしよう。」
と言った。
「こんなの、伽耶が辛いよ」
そう伝えたら、伽耶はポロッと涙を1粒零してからニッコリ笑った。
「……そうだよね、ごめん。優雅は私の事なんとも思ってない訳だし、それが1番良い方法だよね!彼氏いるのに浮気して別の男と関係持つなんて、私ってホント馬鹿だよね。ごめんね優雅」
彼女の無理して笑うその表情に、つい胸を痛めた。だって、伽耶の心を掻き乱したのは俺だから。
でも俺はどの道、彼女の気持ちに応えるつもりはない。伽耶に俺みたいな奴は似合わないし、何より今の彼氏と幸せになって欲しい。だから俺はそんな彼女の背中を押すようにこんな言葉を伝えた。
「俺もごめんな、伽耶。彼氏と上手くやってな。ほら、彼氏の仕事量は増えたかもしれないけど、もしかしたらさ、彼氏だって伽耶と会えないの本心じゃ寂しいって思ってるかもしんないし、伽耶の為にも頑張ろう!って思って仕事してるかもしんないじゃん?だから、伽耶もそんな状況に負けんな」
そしたら伽耶は俺の言葉に頷いて、
「うん、ありがとう……」
と言った。その後に、
「優雅ってこんな一面あったんだね」
と言われた。
「………」
するとその時、伽耶のお腹が鳴った。
「あ、あぁ……タイミング悪っ」
伽耶がそう言って自分のお腹をさする。
「腹減ったか。悪ぃ。そろそろ帰るか」
と言ってベンチから立ち上がる俺。
「飯、出来てんじゃねーの?」
と尋ねると、
「あぁ、今日はうち、両親2人ともたまたま仕事で居ない日なの」
と返しが来た。
「へぇ。じゃあ今日はなんかコンビニの弁当かなんか買うの?」
「まぁね。どこで買うかはなんも考えてなかったけど!」
伽耶と会うのも今日が最後。なのでその状況を聞いた俺は、自分から伽耶にこんな提案を投げていた。
「なぁ、一緒に飯…食わねぇ?」
なんだかんだ、伽耶と出会って2ヶ月くらいが経ってたけど、こうして飯を食うのは初めての事だった。俺達は近くにあったもんじゃ焼きの店に入り、そこで食べながらいろんな話をした。俺の部活の話とか、伽耶は受験生なので、何志望なのかを聞いたり、意外と話に花が咲いた。
「マジ?へぇ、伽耶って美容師志望だったのか」
「うん!ヘアスタイリストとかも興味あってさ!いつか芸能人のセットとかも担当してみたいな!」
伽耶とこんな風に語り合う事になるなんて思ってもみなかったけど、案外楽しかった。
気に入られようとか、モテようとか、かっこよく思われたいとか、そんな思考すっかり忘れた状態で、“ダサい俺で”1時間以上も喋り続けた。
しかも驚いたのがこのお店、
「あれ!!優雅くんじゃん!」
なんと、廉先輩の働く店だったのだ。
「え!!何でいるんすか!!」
「ここ、俺のバイト先よ!」
そんな驚きの出来事もあり、伽耶と楽しい時間を過ごすことができた俺。
でも、これは最初で最後だ。
「じゃあな伽耶。元気で」
「うん、優雅もね」
伽耶は寂しそうにしていた。
いつもは何とも思わない俺も、今日ばかりはちょっと寂しい気持ちになってしまった。
こんなの全然俺らしくねぇや。
そして最後、俺は伽耶にギュッとハグをされた。少しして俺から離れた伽耶は、
「じゃあね!バイバイ!」
と言い残して、そのまま元気に走り去って行った。
この数週間後、伽耶のインスタを見てみると、誕生日に彼氏からブランドのバッグをプレゼントとして貰ったという投稿が上げられていた。
もしかしたら、彼氏は伽耶にこれをプレゼントする為にわざと仕事量を増やしていたのかもしれない。
なんだよ、伽耶。めちゃくちゃ愛されてんじゃん。
インスタにアップされた写真の伽耶もめちゃくちゃ幸せそうだった。
伽耶、幸せになれよ。
時は戻って
伽耶と会った次の日、
この日も部活だったので、藤城サッカー部は来週の星ヶ丘戦に向けてより一層練習メニューを改築させて懸命に取り組んでいた。
星ヶ丘に勝つ事が出来れば、公式戦に向けてかなり自信が付く。
今日は大学の授業を終えて広夢も練習の方に混ざってくれた。時々こうして広夢はOBとして俺達後輩の練習に混ざってアシストをしてくれるのだ。
この間の事があったからこそ、昨日の伽耶の事は広夢に話しておこうと思った俺は、部活終わりに飯に行かないかと広夢に声をかけた。
「わっ、ごめん。今日は先約があるんだよな」
「はぁ!?広夢のくせに」
「どーゆーだよ」
「何?彼女?」
広夢には彼女がいる。相手は広夢が高2の時に同じクラスだった人で、安藤瑞乃先輩という人。
俺はあまり関わりは無いけど、何度か見た事はある。俺のタイプとはまた違うけど、結構可愛くて優しい感じの人だ。
「まぁ、そうだけど…」
「ふざけんなよ!広夢のくせにリア充しやがって」
「いや、広夢のくせにって何回言うんだよ」
「うるせっ」
そしたら、広夢はうーんと唸った後にこんな事を言ってきた。
「待って?聞いてみようか?」
「へ?」
「お前も一緒に良いかどうか」
広夢の言葉に眉を顰める俺。俺は言い返した。
「は!?馬鹿言うなよ。確実に邪魔じゃんかよ」
でも、その返事は想定外で…
「そんな事ねぇよ!今日飯行こうってなってたの、瑞乃だけじゃないんだよ。元々3人で会う予定だったんだ」
「3人?あと1人誰?」
もう1人の名前を聞き、俺は急いで家に帰って私服に着替えて、広夢達の待つ飲食店へ向かった。
「優雅ー!久しぶり!」
そのもう1人というのは、
純理のことだった。
To be continued!!
▷▶︎▷▶︎NEXT 第3話
アンケート
予想しよう!優雅は純理の事をどう思ってる?
もう吹っ切れてると思う!
0%
なんかまだ少し気になってそう!
22%
いや、絶対好きだろ……
67%
うーん、読めないなぁ…
11%
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。