海人「はぁ、ホントバカだな、だから俺はお前のことが好きって言ってんだよ」
私「私もだよ」
無意識に私の口から自然と出た言葉。
刹那…
顎をクイッと持ち上げられ唇に柔らかい感触。
それと同時に閉館をしめす図書館のチャイム。
海人「あなた帰るか」
私「だね」
初めて下の名前で呼ばれた。今までずっとお前呼びだったのに。
私は海人の腕を掴んだ。海人はもう一度私にキスした。
海人の本当の気持ちと私の本当の気持ちを今知れた気がする。
この手だけは絶対に離さない。
いつか私の名前があなたの口癖になりますようにと心の中で何度も願った。
夕日が反射するオレンジ色のこの図書館の中で。
−終わり−
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!