あれから、俺は悪夢に悩まされていた。
あの時緑谷のことを簡単に殺そうとした俺が
まるで両親の移し鏡のようで…
鏡に映る俺は酷い顔をしていた
『あぁ、俺は腐ってもこの家の人間か』
自分が思った以上に弱々しい声に驚く
俺はなんな奴らになりたくない…
鏡には両親の血塗れの亡霊が見える
«お前は俺たちの子だ»
«私達と同じようになる»
それを見ると背筋がゾッとする
『俺は!!』
いき良いに任せ鏡を殴るとヒビが入る
『お前らみたいなヘマはしない』
その顔を父親そっくりだった。
俺は、洗面所から移動し
姉の部屋を見に行った。
12年ぶりの姉の部屋
部屋からは、異臭がした。
部屋のあちらこちらには、黒いシミ
『血か…』
この部屋で姉がもがき苦しみ
俺に助けを求めてくるあの時の場面がチラつく
⦅助けてあなた君!⦆
今でも聞こえるこの声
『違う、過去に囚われすぎてんだ…』
姉の部屋の真ん中にしゃなむ
そして
『記憶ってのは厄介だな』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。