‘子どもは、なんにでもなることが出来る’そんな事を、テレビの向こう側の誰かが言っていた気がする。
それは、子どもの置かれた環境でその子の人生が決まるということだと思った。
多分俺は、ヒーローでもヴィランにも慣れないただの人形なんだ。
空っぽで何も入っていない。
でも、一つだけ俺の意思がある。
『自由になりたい』
零《兄さんの言う自由ってなに?》
俺にとっての自由…
零《自分のしたいことをする事?》
そういえば…誰かが言っていたな…
『自分自身が自由だと感じたら、それが自由だ』
零《兄さんには、無理な話じゃないかな?》
後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。
後ろを振り返るとそこには…ボロボロになっている緑谷が立っていた。
緑谷「影内先輩は、何に迷っているんですか?」
驚いた。
『なんで、そう思ったんだ?』
緑谷「こ、これは僕の勘なんですけど…。訓練中に何か深刻そうな顔をしてたような気がして…」
『緑谷君、自由になりたいって思ったことある?』
大きな目を見開いて俺を見てくる緑谷君。
『自由ってさ、どう足掻いても手に入れることができないんだ。』
緑谷君は何も言ってこない…。
『ごめんね、変な事言ったね。お疲れ様それじゃ。』
緑谷君に、背を向け歩き出した。
緑谷「先輩が、何に悩んでいるのかは分かりません。けど、何かあったら正義を頼ってください。1人で抱え込まないでください!」
俺は振り返ることが出来なかった。
その言葉を聞いた俺は、今すごく酷い顔をしていたからだ。
自由って一体なんだ…
目に見えない。
ただ、漠然とした理想…なのかもしれない。
もしくは…エゴだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。