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第14話

愛されお爺ちゃん
704
2021/02/14 00:39
猪里
猪里
おーい20番、お前に差し入れだ。
アーシィ
アーシィ
わしに?どなたからですかの?
チィー
チィー
あれ?アーシィ……もしかして今日がなんの日かわかってない?
アーシィ
アーシィ
チィーの言葉を聞いてもアーシィは気付いていないようで不思議そうに首を傾げた。
チィー
チィー
今日は2月14日、バレンタインだよ。
アーシィ
アーシィ
おぉ、そうじゃったか。
なるほどそれで………
アーシィはチラリと視線を部屋の隅にやり
アーシィ
アーシィ
リャンが引き込もっておるんじゃな。
移送用の赤い棺を見やった。
猪里
猪里
ったく!毎年毎年贅沢な野郎だな。
美人からこんなに贈り物されてるってのに。
アーシィ
アーシィ
まあまあ。リャンの分はわしが預かっておきますので。
猪里
猪里
あ、あと71番への差し入れは検閲に引っ掛かったからな。
チィー
チィー
え?
猪里
猪里
カミソリの刃やら異物が入ってたせいでな。
それを聞いてウパはドン引き、アーシィもやれやれと呆れを隠せない。
ウパ
ウパ
アナタどれだけ女性に恨まれてるんですか?
アーシィ
アーシィ
年々記録を更新していくのう。
ウパ
ウパ
南波ここからでたら殺されるんじゃないですか。一生ここにいたらどうです?
アーシィ
アーシィ
…身の安全の為にはそうした方が良いやもしれんなぁ。
チィー
チィー
ちょ、アーシィまで酷いっ!
アーシィ
アーシィ
自業自得じゃろうが(ぺしっ!)
チィー
チィー
痛っ
アーシィはチィーの額を軽く叩いた。

そのいつものやり取りを見ながら猪里は
猪里
猪里
まぁ71番のことは置いておくとしても20番はどうすんだ。その大量の菓子。
何気なくそう尋ねた。
アーシィ
アーシィ

勿論全て食べますが。
猪里
猪里
は?この量をか!?
アーシィ
アーシィ
当然じゃ。女子おなごが心を込めて贈ってくれたものを無下には出来ませんでの。
猪里
猪里
71番たちと食うんじゃなくてか!?
アーシィ
アーシィ
?そうじゃが……
段ボール5箱分の菓子を見ながら猪里は顔を引きつらせた。
ウパ
ウパ
凄いですよね。これだけの量食べても身体になんの異常も起こらないなんて
チィー
チィー
いやいや。これでも少なくなった方なんだよ。組織と関わる前はもっと多かったんだから。
ウパ
ウパ
そうなんですか?
チィー
チィー
まぁ、穏やかで人当たりの良い、人気占い師だったからね。そりゃ女が放っておかないって。
チィーが肩を竦める。
チィー
チィー
で、アーシィもアーシィで色恋に疎いってか、贈り物は〝感謝の印〟みたいに思ってるから……余計に女がヒートアップしちゃってさ……。
猪里
猪里
あー……典型的な『罪作りな男』ってやつだな。
ウパ
ウパ
何か…話だけ聞いていればアーシィの方が女性の恨みを買いそうですが…。
その場の全員がアーシィに視線を向ける。

が。
アーシィ
アーシィ

おぉ、この菓子は花茶に合いそうじゃの。わしの好みを知っておってくれたとは…有難いのう。
ほわほわと花を飛ばしながら好好爺のような笑みを浮かべる29歳に
『あれじゃあ毒気も抜かれるな』
と3人の心がひとつになったのだった。
                     了



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