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第24話

‥大王様の念願‥
7,580
2022/01/08 12:23
今日は体育祭。


いつもより早起きして、顔を洗って身支度をしてから、エプロンを装着した。


岩泉 あなた
よーし、やるぞ!
岩泉 母
岩泉 母
今日は三人版だから、張り切らないとね。



体育祭は休日にあるため、給食は出ない。



そういう、"お弁当が必要な日"には、私は欠かさずこうして早起きして料理をする。





今までと違うのは、私も同じお弁当を食べる、ということ。



岩泉 母
岩泉 母
メニューは昨日決めたこれと、それから仕込みもちゃんとできてるし……じゃあ、取り掛かろっか!
岩泉 あなた
うん!







袖を捲って、包丁を手にした。




気合い入れるぞ!






















岩泉 一
岩泉 一
……はよ
岩泉 あなた
!おはよーお兄ちゃんっ。




お弁当は準備も終え、包んでから食卓の端っこに並んでいる。


朝ごはんの時間にしっかりと起きてきたお兄ちゃんは、重たそうな目を擦りながら席に着いた。





岩泉 母
岩泉 母
今日、お弁と___




何も言わないお兄ちゃんに、お母さんが声をかけようとした時。



お兄ちゃんはスッとその場を立ち、手を洗っている私のすぐ側までやって来た。




岩泉 一
岩泉 一
あなた。
岩泉 あなた
……、?




名を呼ばれて、まだ石鹸のついた手をそのままにお兄ちゃんを見上げる。




あれ、こんなに背、大きかったっけ。









フワッ



岩泉 あなた
!!
岩泉 一
岩泉 一
弁当サンキューなっ。





そう言って、私の頭をよしよしと撫でた。





岩泉 あなた
へへ……今日はね、絶対勝てるように特製だよ!
岩泉 一
岩泉 一
おっ、そんじゃあうちのブロックは優勝間違い無しだな!
岩泉 あなた
あったりまえ!




2人でニシシと笑って、お母さんに声をかけられたので朝ごはんを食べることにした。

















ピンポーーーーン



岩泉 あなた
ん、早くない?
岩泉 一
岩泉 一
あー、アイツ楽しみにしてたからな。
岩泉 あなた
??体育祭なら毎年あるじゃん。
岩泉 一
岩泉 一
いや……まあ、とりあえず行ってくる。




朝ご飯を食べている途中に鳴ったインターホン。



朝のこの時間に訪ねてくると言ったら、1人しかいない。



いつもより少し早いけど。





及川 徹
及川 徹
あなたーーー!おはよ!
岩泉 あなた
おはよ。徹くん!






お兄ちゃんと一緒にリビングに入って来たのは、体操服に身を包まれた徹くん。




満面の笑みで私に駆け寄って来て、ついでにお母さんにも挨拶している。




岩泉 あなた
来るのいつもより早くない?
まだ準備できてないや……。





とりあえず急いでお味噌汁を啜っていると、徹くんは「それはねぇ……」と視線をスライドさせる。




そして、一点にピタッと止めてから口角をぐっと上げた。





及川 徹
及川 徹
これえええええ!
これだよこれ!あなたのお弁当っ!!!
岩泉 あなた
んぐっ、……んぇ、そんな事??
及川 徹
及川 徹
そんな事!?
何言ってんのさコレは俺の念願なの!!



お弁当をキラキラとした目で見るものだから、「1番左が徹くんのだよ。」と言ってあげると嬉しそうに持ち上げる。



及川 徹
及川 徹
あぁ……ついに俺にも愛妻弁当がっ!!
岩泉 一
岩泉 一
ぶん殴るぞ。
岩泉 あなた
そんなに喜んでくれると思わなかった……。
及川 徹
及川 徹
何言ってんのさ!!
こうして3年になって最後の体育祭!
初めて俺の念願が叶ったんだよ!
岩泉 一
岩泉 一
おう。うるせぇからちょっとあっち座ってろ。







お兄ちゃんに追いやられた徹くんは、ちょこんとソファーに腰掛ける。



それでもお弁当は抱えて離さなくて、キラキラした目でいろんな角度からそれを眺めている。









そんなの、頑張って作った側からしたら何よりの喜びだ。




及川 徹
及川 徹
あなた〜っ
岩泉 あなた
ん、?
及川 徹
及川 徹
今日、絶対優勝だね!!





お兄ちゃんとの会話を思い出してこちらも笑みが溢れ、「そーだね!」と満面の笑みで返した。

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