【次の日】
新入生歓迎会
生徒会の人がマイクをもって元気に言うと、ステージの証明が消えた。
ざわざわと騒がしくなった会場が、スポットライトを浴びたステージの中心に立つ生徒に視線を集めた。
……あれって__。
視線の先には、王子様の格好をした男子生徒。
王子(徹くん)が両手をバッと広げると、会場が一気に沸いた。
1年だけではない。
2年生も大盛り上がりを見せ、今日1番体育館が元気になった。
みすたーこんてすと……?
そういえば文化祭でやったとか言ってたような……。
そう言うと、ステージ脇から赤いクッションの上に透明なヒールのくつを置いて運ぶ召し使____。
お兄ちゃん!?
めっっちゃ嫌そうな顔のお兄ちゃんに、徹くんはお腹を抱えている。
ステージから降りた2人は、ゆっくりと歩きながら新入生の女の子の足にくつをあてがっていく。
もうものすごい盛り上がりだ。
足に触れられた女の子は言葉を発さずに、周りの子達が甲高い声をあげる。
それにしても……。
そう。
なぜか徹くんは背の高い子達に声をかけていって、くつが合わないとふるふると首を振っている。
こんなに何人も履いていて1人もぴったりの人がいないなんておかしい……。
と、2人は私が座っている列の端にいた女の子に声をかけた。
……今、チラッとこっち見なかった?
はい確定徹くん確信犯だこれ。
案の定、列の真ん中の方に座っていた私にわざわざ声をかけてきた。
流れ的に断るわけにも行かないし、通路に出る。
スポッ
……おいおい。
わざとらしすぎる演技なのに、会場は大きく盛り上がる。
もう私の近くにいる女の子とか発狂してるし。
ほらほら、もう、あかんですって。
手を引いてくるので声を潜めて言うと、お兄ちゃんがこっちを向いた。
当然このあと、えらい視線を向けられた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。