第20話

‥牛若でした‥
9,639
2020/08/09 05:39
あなた

お兄ちゃん!お疲れ様〜

大会2日目。


昼休憩後には決勝戦だ。



勿論お兄ちゃ______北川第一は順調に勝ち進み、決勝へと駒を進めた。
及川 徹
及川 徹
あなた〜お弁当食べよ!
あなた

うん!
あんまり食べすぎないようにしてね〜?

徹くんがお弁当を持ってきて隣に座ったので、私もリュックから弁当を出す。
岩泉 一
岩泉 一
じゃあローテはこれでいいだろ
及川 徹
及川 徹
そうだね、センターが______
専門的な事よく分かんない……。
あなた

________、〜、

国見 英
国見 英
わっ、
コクりコクりと頭が揺れて、後ろを通っていた国見くんに当たってしまった。
あなた

ぅあ、ごめん……

金田一 勇太郎
金田一 勇太郎
眠いのか?
岩泉 一
岩泉 一
あー、お前やっぱ夜更かししただろ
あなた

う"

やっぱりお兄ちゃんにはバレてたか……。
及川 徹
及川 徹
夜更かしって?
岩泉 一
岩泉 一
こいつ、「バレー観戦ハマった」っつって昨日帰ってからタブレット独占してたんだよ。Vリーグの試合見漁ってた
及川 徹
及川 徹
あはっ、マジかぁ!
あなた、バレー好きになった?
あなた

好きっていうか……見てるの楽しい!
もっとこうしたら動きやすいとか、もう伸び代しかなくて!

岩泉 一
岩泉 一
プロ選手に伸び代って言うあたりお前だよな
爽やかに笑ってよしよしと頭を撫でられた。
あなた

へへ……。
眠気覚ましに顔洗ってくる!

午後の試合こそ集中して観たいから、一旦その場を離れた。










あなた

くぁ……、

??
??
眠そうだな
あなた

トイレから出ても尚眠気に襲われて大きなあくびをした私に、丁度トイレから出てきた誰かが声をかけてきた。
あなた

……あ、若くん

牛島 若利
牛島 若利
……すまない。名前を聞いてもいいか?
あ、そういえば言ってなかった……っけ?
あなた

あ、あなたです。
岩泉あなた。

牛島 若利
牛島 若利
「岩泉」……?
若くんは眉間にシワを寄せると、ズイッと私に顔を寄せた。




近________っ、。
牛島 若利
牛島 若利
似ている……か?
あなた

グイッ
あなた

わっ、

至近距離の若くんに戸惑った私を、誰かが後ろに思いっきり引っ張る。
及川 徹
及川 徹
なにあなたに絡んでんの……?
"牛若"ぁ……!
あなた

徹く_______っ、え、"牛若"って……。


『ぜってぇ"牛若"倒す』



お兄ちゃんが言ってた、「牛若」って……。
牛島 若利
牛島 若利
及川……岩泉か
岩泉 一
岩泉 一
あなた、何された
あなた

えっ、いや何も……。

されてないされてない。



……って、ちょっと待って。



頭が追いつかない……。
あなた

え、え?う、牛若……って、若くんの、事?

及川 徹
及川 徹
なぁっ!?何その呼び方!!?
牛島 若利
牛島 若利
?俺は牛若だが……。
え、え、つまり……お兄ちゃん達が「倒す」って言ってた相手は若くんで、若くんは白鳥沢で、つまり決勝の相手……で。
岩泉 一
岩泉 一
あなた、牛若と知り合いなのか?
あなた

え……知り合いっていうか、

牛島 若利
牛島 若利
やはり、岩泉の妹か。
あ……「似ている」って、そういう事……?
及川 徹
及川 徹
あなたに近づかないでよね!!
あなた

ちょ、徹くん……!

後ろから腕が回ってきて、抱き寄せられた。


いつもならいいんだけど若くんが目の前にいるのに……!
牛島 若利
牛島 若利
?……変な事はしていない。
あなた

そ、そーだよ!何も……

及川 徹
及川 徹
ふん!!信用できないねぇ!
あなた戻るよ!!
グイグイ引っ張られて、若くんから離される。
あなた

掌を合わせて口をパクパクさせると、若くんはコクリと頷いてくれた。
及川 徹
及川 徹
まったく……!油断も隙もないね!
あなた

えっと……ほんとに若くんとは何も、

岩泉 一
岩泉 一
あなた、あいつん事好きなのか?
あなた

へ!!?

なんでなんでそんな話に……??
あなた

や、そういうんじゃない!
ただ普通にいい人だからっ。
バレーも……凄いし_____っ、

及川 徹
及川 徹
…………
岩泉 一
岩泉 一
…………あぁ
私の返答に、何故だか2人の空気が重くなった。
金田一 勇太郎
金田一 勇太郎
あのっ、そろそろ集合らしいです!
金田一くんが呼びにきてくれて、2人は「おー」と返した。


そして。
岩泉 一
岩泉 一
あなた
あなた

……?

岩泉 一
岩泉 一
"観とけよ"
あなた

……っ、

低い低い声が、若くんへの_____"牛若"への対抗心を露わにしていて。


あぁ、2人がバレーの話をしていると、時折やりきれない顔になるのはこのせいだったんだと。





思わざるを得なかった。

プリ小説オーディオドラマ