大会2日目。
昼休憩後には決勝戦だ。
勿論お兄ちゃ______北川第一は順調に勝ち進み、決勝へと駒を進めた。
徹くんがお弁当を持ってきて隣に座ったので、私もリュックから弁当を出す。
専門的な事よく分かんない……。
コクりコクりと頭が揺れて、後ろを通っていた国見くんに当たってしまった。
やっぱりお兄ちゃんにはバレてたか……。
爽やかに笑ってよしよしと頭を撫でられた。
午後の試合こそ集中して観たいから、一旦その場を離れた。
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トイレから出ても尚眠気に襲われて大きなあくびをした私に、丁度トイレから出てきた誰かが声をかけてきた。
あ、そういえば言ってなかった……っけ?
若くんは眉間にシワを寄せると、ズイッと私に顔を寄せた。
近________っ、。
グイッ
至近距離の若くんに戸惑った私を、誰かが後ろに思いっきり引っ張る。
『ぜってぇ"牛若"倒す』
お兄ちゃんが言ってた、「牛若」って……。
されてないされてない。
……って、ちょっと待って。
頭が追いつかない……。
え、え、つまり……お兄ちゃん達が「倒す」って言ってた相手は若くんで、若くんは白鳥沢で、つまり決勝の相手……で。
あ……「似ている」って、そういう事……?
後ろから腕が回ってきて、抱き寄せられた。
いつもならいいんだけど若くんが目の前にいるのに……!
グイグイ引っ張られて、若くんから離される。
掌を合わせて口をパクパクさせると、若くんはコクリと頷いてくれた。
なんでなんでそんな話に……??
私の返答に、何故だか2人の空気が重くなった。
金田一くんが呼びにきてくれて、2人は「おー」と返した。
そして。
低い低い声が、若くんへの_____"牛若"への対抗心を露わにしていて。
あぁ、2人がバレーの話をしていると、時折やりきれない顔になるのはこのせいだったんだと。
思わざるを得なかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!