私が声を出せなくなってから約1週間。
その間、碧くんは必ず病院にお見舞いに来てくれた。
菜奈もきてくれて
学校のことを話してくれた。
藍さんと木兎さんもお見舞いに。
ただ、来てくれたみんなには京治くんには絶対に話さないで、とお願いした。
私はこの病気の原因が京治くんだと分かっているから。
嫌なことがその瞬間にフラッシュバックした。
京治くんの顔を見たら、苦しくなるだけだ。
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だいぶ落ち着いてから
病院での療養を終え、しばらくは家で療養することになった。
まだ何も話せないので、学校には行けない。
ただ、家にいても暇なので
私は近くの道場に行った。
嫌なことがあれば弓道をして紛らわせていた。
体は元気なのに、まだ心が追いついてくれない。
ただの嫉妬なのに。
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一方その頃…
京治くんは最近私と会っておらず
大会も近いため、そろそろ話したいと思っていたらしい。
連絡は来ているが全て無視していた。
「話したい」と送られてきたが
今の彼と話せる心境ではない。
京治くんは菜奈と碧の話が聞こえたみたいだ。
木兎さんも何もないと言ってくれたが
京治くんは聞かなかった。
彼らから私が今どこにいるのかを聞き出した。
木兎さんが怒るなんて珍しい…と
菜奈が言っていた。
その日の夜、家のチャイムが鳴った。
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モニターを見るとそこには京治くんがいた。
(なん…で……)
会いたくない…。
でも、そこには愛しい人が立っていた。
大好きなはずなのに、今は、会えない……
私は急いで自分の部屋に戻った。
夏希がそれを見て、玄関を出る。
そう言って、彼は家に入る。
夏希は私の病気のことを説明してくれた。
そしたら京治くんは急いで私の部屋にきてノックをした。
私は開ける勇気がなくて、固まっていた。
優しい彼の声が聞こえる。
(これは私のせいなのに…)
(毎日幸せなのに…)
(京治くんは何も悪くない…)
京治くんのせいにしてきたけど
これは自分の問題なんだ。
私が言いたいことを言えずにストレスを溜めて
結局こうなってしまった。
全部、全部私のせいなのに
声が出た。京治くんに、会いたくなった。
私は部屋のドアを開ける。
すると京治くんはギュッと私を抱き締めた。
辛い思いさせてごめん、と
茉希の傍から離れないから、と
私にずっと言ってくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。