第19話

- episode 18
281
2020/09/02 03:48
鳥居の前で集合だった。
菜奈から今日来るのは碧くんだと聞いていた。

鳥居の前に2人がいた。
(これじゃ私、一人余るじゃん…)
宮川 藍
宮川 藍
光ちゃん!
木兎光太郎
木兎光太郎
お〜!藍!浴衣似合ってるな!
いつ見てもお似合いだと思う。
木兎光太郎
木兎光太郎
あー、もう一人来るんだけど…
あ、来た来た!こっちだぞ〜ッ!
木兎さんが手を振る。
すると急いで走ってくる男の人が一人。

小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
け、京治くん…
赤葦 京治
赤葦 京治
お待たせ、しました…
京治くんは待ち合わせなどに
遅れてくるような人じゃないのに
今日は珍しく遅れて来た。

じゃあ行こうかと言う木兎さんに
私たちはついて行った。

近年私は海に行ったりしなかったので
久しぶりの海に内心感動していた。

5人みんなで楽しそうに
はしゃいでいる姿を見ると
私は本当に来てもよかったのだろうかと思う。

時間も時間なので、菜奈と藍さんと碧くんは
場所取りを始めた。
私たち3人で買い出しをすることになった。
これはジャンケンで決めたので
もう仕方がない。

2人は私が逸れないように
ゆっくり歩いてくれたが
なんせ花火大会の屋台の通りだ。
人が多すぎる。

2人についていくのに必死で
前を見ていなかった私は
誰かとぶつかってしまった。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
あ、すみません…
南 彰人
南 彰人
いえ…。って!!
小鳥遊さん!!
そこにいたのは南くんだった。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
み、南くん!!
南くんは私の浴衣の衿元を見て
申し訳なさそうにしていた。

私の衿元に
お好み焼きのソースが付いていたのだ。
南 彰人
南 彰人
マジでごめん!
せっかく綺麗に浴衣着てるのに…
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
大丈夫だよ!
すぐ洗えばシミにはならないと思うし
南 彰人
南 彰人
ついていくよ!
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
私ひとりで大丈夫だよ!
野球部の皆と来てるんでしょ?
楽しんでね!
私はそう言って
急いで蛇口があるところに行った。

淡い水色の浴衣だから、かなり目立つ。
だいぶ落ちてきたので
京治くんたちを探そうとしたが
この人の多さでは見つからないだろう。
(はぁ…また迷惑かけちゃった…)
そう思っていると
誰かに手を掴まれた。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
…!きゃっ…!
赤葦 京治
赤葦 京治
あ、ごめん。俺だよ
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
け、京治くん
赤葦 京治
赤葦 京治
何してたの
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
人にぶつかって
ソースが浴衣についちゃって
ソースを落としてたら…
赤葦 京治
赤葦 京治
なんで連絡しないんだよ
心配した。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
ごめんなさい
京治くんへの、恐怖心が薄れたわけではない。
でも、私はまだ京治くんのことが好きなんだと改めて感じた。

温もりを感じる手
優しい声
全てが愛おしかった。

「大嫌いだ」と言われても
私は彼のことが「大好き」だ。

彼に手を引かれ
みんなの元に急ぐ。

そういやこの浴衣、
京治くんの好きな色にしたんだけど、
気付いてくれてるのかな…
無言のまま歩いていると京治くんが口を開いた。
赤葦 京治
赤葦 京治
浴衣…
彼は照れ臭そうに顔を逸らして言った。
赤葦 京治
赤葦 京治
似合ってる。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
ありがとう
赤葦 京治
赤葦 京治
あのさ
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
ん?
赤葦 京治
赤葦 京治
みんなのとこ行くのやめて
2人で花火…見る?
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
え、?いいの?
「大嫌いだ」と言っていた彼から
一緒に花火を見ようと誘われた。

本当にいいのなら
できることならずっと一緒にいたい

本当はあんなことがなかったら
この花火大会に誘おうと思っていた。

赤葦 京治
赤葦 京治
もちろん
木兎さんに連絡しとくね
なんか人格が変わったみたいで
ちょっと怖かったけど
私は京治くんと2人で花火を見ることになった
花火が打ち上がるまでと1時間ほどある
屋台で何か買って行くことになった。

私はたこ焼きや焼きそば、りんご飴など
祭りっぽいものを食べたいと思っていた。
「何食べたい?」と聞かれたら
真っ先にたこ焼き!って言うだろう。
京治くんは私が逸れないように
手を繋いでくれた。

こんなのカップルみたいで恥ずかしい。
赤葦 京治
赤葦 京治
なんか、懐かしいな。
小学生の頃こうやって一緒にお祭り行ったな
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
そうだね
赤葦 京治
赤葦 京治
茉希はこういうところに来て食べたい物
今でも変わってない?
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
う…ん
赤葦 京治
赤葦 京治
じゃあ、まずは…りんご飴だな
その後に焼きそばとたこ焼き…だな
一緒にお祭りに行ったのは
もう何年も前のことだ。

なのに、京治くんは
まだ覚えていてくれた。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
なんで覚えてるの?
赤葦 京治
赤葦 京治
そりゃ覚えてるよ
彼は楽しそうに答えた。

屋台を回っている時も
楽しそうに話しかけてくれて
1週間前のことが嘘のようだった。

食べたい物を買い終えて
花火を見る場所を決めに行った。

小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
やっぱり人多いね〜
赤葦 京治
赤葦 京治
そうだな…
これじゃ場所取れないか…
あと20分ほどで花火が打ち上がる。

私はここ周辺で花火がよく見える場所を
知っていた。
父に教えてもらったのだ。
母とよく見てた場所だって言っていた。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
京治くん!ついてきて!
私は彼の手を引き歩きだす。

その場所は
ある公園の丘の上だ。

海辺に人が集まるので
すこし離れている公園に
人はあまり集まってこない。

父と母だけの秘密の場所を
私に教えてくれたのだ。

打ち上がるまで残り5分。
ようやく公園に着いた。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
ついた〜っ
赤葦 京治
赤葦 京治
ここは…
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
そう。私たちの家の近くの公園だよ。
赤葦 京治
赤葦 京治
なんでこんな…
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
お父さんとお母さんに教えてもらったの。
ここはあまり人が来ないから
2人で見れるって
赤葦 京治
赤葦 京治
なるほどな
丘の上に私が持ってきていた
レジャーシートを敷き
2人で座る。

買ってきた食べ物を2人で食べ始めた時

ドーンっ
花火が打ち上がった。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
綺麗〜!
2人で見る花火はいつぶりだろうか。
花火の光に照らされた
京治くんの横顔はとても綺麗だった。

改めて好きだと感じた。

何があってもどれだけ嫌いだと言われても
私はきっと、ずっと京治くんが好きなんだ。

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