京治くんに声をかけていたのは
同じクラスの子だった。
京治くんはまだ練習着を着ていた。
(さっき終わったばっかりなのかな…)
盗み聞きは良くないってわかってる。
でも、気になる…
(こ…告白…!)
私はずっと京治くんを見てきたけど
こうやってずっと好きだったっていう子は
私以外にもいるんだな、と思った。
一歩も踏み出せない私と違う
彼女は羨ましかった。
(京治くんは何も言わないの…?)
(え…好きな、ひ、と…?)
私も知らなかった。
京治くんはただバレーが好きで
女子になんか興味ないんだろうなって
思っていたから…
(そうか…そうなんだ…。京治くん好きな人いるんだ…)
ショックだった。
悲しかった。
告白もしてないのに失恋した。
悲しくなって
気づいたら家まで走っていた。
携帯を見ると京治くんからの着信。
京治くんには
体調が優れなくて先に帰ったと連絡した。
明日も会いたくない。
せっかくたくさん話せると思ったのに…
まともに顔見れない…
人生で初めて失恋をした。
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家に帰ってから料理をするも
気力がなく、ボーッとしていたら
火傷をしてしまった。
今日は手を抜いてしまった
いつもはちゃんと作るのに
作り置きのものをパパッと出して
あとは魚を焼いただけ。
夏希にも心配された。
大丈夫ではないが、顔には出さないようにした。
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父が帰ってきて3人で夕飯を食べる。
父に部活の話をした。
快くOKしてくれたので
明日藍さんに言いに行こう。
部屋に戻る。
(今日はベランダに出るのやめておこう)
きっと京治くんもベランダに出ているだろうから。
その日から私は京治くんを避けるようになった。
京治くんの恋の邪魔はしたくないから。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。