第17話

- episode 16
284
2020/08/31 23:19
菜奈に今の気持ちを全て打ち明けた。

理解してくれたし、アドバイスもしてくれた。
ただ一つ、聞けてないことがある。
菜奈が京治くんのこと好きかどうか。

それはまだ聞いてはいけない気がした。
時岡 菜奈
時岡 菜奈
あ、そうだ茉希
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
ん?
時岡 菜奈
時岡 菜奈
私ね…好きな人がいるの!
菜奈の好きな人の話…
こういう話は久しぶりだから
嬉しいはずなのに胸が痛かった。

小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
好きな人…?
時岡 菜奈
時岡 菜奈
そう!
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
そ、それは…誰…なの?
絶対京治くんだと私は思っていた。
放課後いつも仲良く帰っているのを見て
確信していた。
時岡 菜奈
時岡 菜奈
だ、誰にも言わない?
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
うん
時岡 菜奈
時岡 菜奈
南くん…なんだ…
え?今、なんて?
南くんって言った?
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
え、み、南くん?
時岡 菜奈
時岡 菜奈
そう…っ!来週花火大会あるでしょ?
誘われちゃって、きゃーっ!って感じ!
ホッとした。
京治くんじゃなくてよかった。と思ってしまった。

これで安心して菜奈の恋を応援できる。
きっと京治くんが好きって言われたら
心の底から応援する事はできなかっただろう。

菜奈には幸せでいてほしいし
私は菜奈の幸せを願っている。

(菜奈、がんばれ…!)

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菜奈と話していたら
時間が過ぎるのが早い。

テスト期間に入り
部活動禁止期間に入った。

勉強しながら話していたのだが、
気づけば17時になっていた。


時岡 菜奈
時岡 菜奈
そろそろ帰ろっかな
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
うん、そうだね…
実は今日1日体調が優れない。
立ち上がるときにフラッとしたり
歩いていても足元がふらついている。
菜奈にはバレないようにしていた。

(なんかあついな…)

教科書やノートを片付けていると
時岡 菜奈
時岡 菜奈
み、南くんから一緒に帰ろ!って…
先帰っちゃうけど大丈夫…?
と菜奈に言われた。
私はもちろんと言った。

彼女は少し申し訳なさそうに教室を出て行った。

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片付け終わって椅子から立ち上がったとき
またふらついた。

おそらく昨日の雨が原因だろう。
風邪をひいたみたいだ。

熱はないと思うから
さっさと家に帰って薬を飲んで寝ようと思った。

廊下から木兎さんと京治くんの声が聞こえた。
今こんなところ見られたら
心配をかけてしまう。

でも最近話してもないのに
心配なんかしてくれるのだろうか。

そんなことないだろうと思った。
フラフラしているけど
私は平然を装い教室を出る。

ちょうど木兎さんに声をかけられ
振り向いたが
木兎さんの顔も京治くんの顔も見えなかった。
(あ、れ……)

バタっ……
赤葦 京治
赤葦 京治
…!茉希……ッ!!!
京治くんの声が聞こえた
その後に続いて木兎さんの声も。

京治くんが私を支えてくれている。
赤葦 京治
赤葦 京治
すごい熱…
ぼ、木兎さん、俺茉希連れて保健室行くんで
木兎光太郎
木兎光太郎
お、おう…
先帰るな、ごめんな
赤葦 京治
赤葦 京治
大丈夫です。
木兎さんは京治くんに任せて帰ったようだ
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
……ハァ…ハァ…
赤葦 京治
赤葦 京治
大丈夫か…茉希…
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
大丈夫…です…。
一人で…。帰れ、ます…
赤葦 京治
赤葦 京治
こんな熱で一人で帰れるわけないだろ
心配してくれているのだろうか。
京治くんを避け続けていた私を
心配してくれているのだろうか。

もし、そうなら…
いや、それだけでも嬉しいや…。

気づけば私の目から涙が溢れていた。

京治くんに勝手に恐怖心を抱いて
恐れて避け続けていた。
でも彼は…昔と変わらない優しい人だった。
もう少しだけこの優しさに触れていたい。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
せめて…保健室には行かずに
家まで一緒に……
赤葦 京治
赤葦 京治
駄目。ちゃんと診てもらわないと。
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
家に帰ってからお父さんに病院…
連れて行ってもらいますから…
まだ京治くんと一緒にいたいなんて
口が裂けても今は言えない。

ただ、一緒にいるこの時間がもう少しだけ長く続けばいいのに…
赤葦 京治
赤葦 京治
はぁ…
分かったよ
ため息をつきながらも
私のわがままを聞いてくれた。

昔からよく風邪をひく
私の扱いには慣れているみたいだ。

京治くんに支えられて
家まで一緒に帰ることになった。

ただ、歩くだけでフラつくので
京治くんは校門を出てからしゃがみ
私をおぶろうとした。

今は否定しても無理やりおんぶされてしまうから、今回は従った。

意識が朦朧とする中、
京治くんの
「もう少しだからな、頑張れ」という声が聞こえた。

私は正直この時なら何を言ってもいいと思ってしまった。
熱を出して、寝て起きた次の日
記憶がないのだ。
意識が朦朧としているからだと思うが。

私は本当に無意識で彼の耳元で
小鳥遊 茉希
小鳥遊 茉希
私…京治くんが…好きだよ…
と、言っていた。
それ以降、起きるまでの記憶はない。

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目を開けたら私は自分の部屋にいた。

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