カッ、となって脇の元から離れる
イライラして、苦しくて、
なんで信じてくれないの、って
冷たい風を切るように、走って何処か遠くへ行く
ドンッ
誰かと肩がぶつかる
ガラの悪い2人の男に捕まった
掴まれてしまった手は、ジンジンと痛みが増していく
グイグイと路地裏に連れ込まれていく
口を手で塞がれ、声が出せない
これじゃもう…
犯されるっ………!!!!
私を助けるために、立ち向かう彼
生々しい音と共に、男が倒れた
そして1人で2人に立ち向かうそらくん
怪我したって立ち上がって私を助けてくれる
かっこよくて
彼だけが、今の私の助けに見えて。
2人は悔しそうな顔して、私を睨んで暗い路地裏に消えてった
大きなジャケットを私にかけてくれた
そらくんの顔には殴られた痕があって血も出ていた
私を、助けたから、怪我して…
彼の頰に触れると、彼がその私の手を握る
その姿が、脇と重なる
ピッタリと。
その姿に涙が出てくる
ごめんね、そらくん
こんな時まで、私の頭の中は
脇ばっかなんだ…
喧嘩して、信じてもらえなくて
こうやって助けてもらえなくて、目の前にいなくても
私は、彼でいっぱいなんだ
乱された服は、街を歩けないほど酷くて
そらくんのジャケットが助けだ
そらくんの車の中で着替えると、案の定ぶかぶかで
おかしくて
そらくんは顔を赤くして、照れ臭そうに笑う
クシャとなる目尻
一瞬、胸が熱くなる
車の中はそらくんの匂いでいっぱいで
包み込まれてるみたいで
抱きしめられてるみたい
家の近くまで送ってもらった
今度、その言葉で喜ぶ彼は
本当に脇みたいで。
家に入ると、薄暗い部屋
脇はいないんだろう
急いで電気をつけると、ソファーに座る脇がいた
私を横目で睨むその目に、またゾッとした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!