そう言って笑う先輩
サラサラとなびく髪の毛が
綺麗で、儚くて
インチキだ、脇先輩は
こんないい女を独り占めできるなんて。
悲しそうに、眉を下げて
俺に謝るんだ
また、どうせ
どうせ
ほら、脇先輩だ
口を開けばいっつもいっつも脇って、
俺、まじで
勝ち目ないじゃん
先輩のその綺麗な手が
俺の頰を包み込んだり
先輩のその綺麗な瞳が
俺だけに釘付けになったり
先輩のその綺麗な声で
好きだよ、って言われたり
先輩のその綺麗な体を
俺だけのものにできたり
そんなの、夢の夢のまた夢
だって、脇先輩が離すわけないじゃん
てか、先輩が脇先輩だけしか見えてない時点で
俺、100%無理じゃん?w
でも少しだけもがいてみたい
先輩のためなら
こんなに夢中になったのは、先輩が初めてだから、
少しでも、0.1ミリでもいい
可能性があるなら
僕にください。
先輩は、悲しそうな顔して
また眉を下げた
そして
俺を悲しそうに見た
そう俺に告げる先輩は、
下を向いて俺と目を合わせてくれない
とても苦しそうで
とても辛そうだった
こんなこと言って、たくさん先輩を困らせる俺は
本当に、心底バカだよ
そう言って、俺の前から立ち去った
強い背中
強い足踏み
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!