空を見上げるのが癖だった。
空を見て、何も考えずに時間だけを過ぎさせる。
いつもこの景色だけをみて、他は何も感じずにいられたらって、いつも、いつもそれだけを思った。
静かなわたしだけの世界。
ふいに聞こえた、ひとつの音。
____カシャ。
小さな小さな響きだった。
少しの間をあけながらリズムよくわたしの中に落ちていくこの音。
___カシャ、カシャ、カシャ。
____カシャ。
すぅ、と息を吸って、前を見ると、そこには黒いカメラをかかえた男の子が立っていた。
目線を合わせるともう一度カシャ。と小さな音が響いた。
しん、ととても長く、でも本当はほんのわずかな時間が過ぎた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。