兄クロードは、私がソファに座ったのを確認すると、一息にいった。
矛盾したことをいう兄クロードに私は目を見開いたまま、なにも返す言葉が浮かばなかった。
私が小さくいうと、兄クロードは笑ってくれた。
そんなこと言わないでください、大丈夫です。
そう返そうとしたときだった。
ーーガタッ!!
外から大きな音がした。
直後、勢いよく玄関が開いて、誰かが出ていく音がした。
兄クロードさんは慌てたように、リビングから出る。
私もあとから続いて出ると、玄関の前にシルクの荷物と思われるカバンが落ちていた。
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シルクside
嘘だ、嘘だ、嘘だ。
兄貴があなたのことが好きだなんて。
ただ走った。
最近全く運動していないせいか、すぐに息がきれる。
どうして、俺だって...俺だってあなたが好きなのにっ...!!
兄貴はかっこいい。俺の憧れでもある。
どれだけ頑張っても俺は兄貴に勝てない。
きっと、あなたは兄貴の方へ行ってしまう...!
俺は...っ、そんなの耐えられない!!
いつの間にか俺は昔メンバーで遊んだ公園にいた。
雨も降りだし、びしょびしょで寒かった。
ため息をついて、ベンチに座ってうつむいていると。
急に雨がやんだ。
いや、正しくはやんでない。
誰かが俺の上に傘をさしたんだ。
驚いて顔をあげると、そこには。
久しぶりの顔、久しぶりの声。
少し不機嫌そうな感じだったが、俺は驚きで声がでなかった。
過呼吸は前のように起きなかった。
きっとあなたのおかげ...。
そう思ったとき、またさっきのことを思いだし、うつむく。
マサイは何があったかなんとなく察したかのように、俺にいう。
俺はいく宛もないので、小さく頷いた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。