第2話

はじめまして
1,022
2019/05/03 11:26
兄クロードさんに連れられ、私は兄クロードさんの家………シルクの実家にきた。
こ、こんなこといいのだろか……。
兄クロード
そんな緊張しないでいいから。大丈夫だよ
あなた

は、はい……

兄クロード
そういや、名前聞いてなかったね。なんていうの
あなた

あなた、です

兄クロード
あなたさんか。あ、上がって
あなた

ありがとうございます

私は玄関からリビングへ通された。
??
……兄貴、おかえり
リビングのソファに誰かが寝転がっていた。
寝癖がそのままになり、凄いことになっている黒髪。

人より厚めの唇。


眠そうに薄く目を開ける彼が………。






フィッシャーズのリーダー、シルクロードがそこにいた。
シルク
…兄貴。その娘、誰?
シルクは私を少し不審そうに見て、言った。
シルク
まさかと思うけどさ、アレ…じゃないよな
あなた

アレ…?

私が聞き返したが、シルクは答えない。




兄クロードさんが小声で小さく私に言った。
兄クロード
フィッシャーズファンのことだよ、あなたさん
あなた

ファン…?
私、ファンですけど……

私も小さく返したつもりだが、シルクに聞こえてしまった。






シルクは私がファンだと知った瞬間、サァ……っと顔が青ざめた。
シルク
なんで………なんでこんな女連れてきたんだよっ!!!
シルクは兄クロードさんに向けて怒鳴った。





そして、私から距離を取るように、後退った。
兄クロード
お前も『ソレ』、治さないとだめだろ!
だから、連れてきたんだ!
心配なんだよ、俺は!
兄クロードさんも言い返すように怒鳴る。



シルクは兄クロードさんの言葉を聞いて、ますます顔を歪ませる。
シルク
兄貴に……兄貴に何がわかんだよ!!
余計なお世話だ!!
あなた

あ、あのっ………

シルク
うるせえ!!黙れ!!!
俺に近づくな!!
あなた

ッ!!

私は困惑して小さく声を出すと、シルクはクッションを私に投げつけた。



当たらなかったものの、少し怖かった。



だが。
シルク
来るな………俺に……近づくな…………
私に向けるシルクの表情は怒りではなく、恐怖の表情だった。
シルク
………っ
シルクはそのまま走ってリビングから出て行った。
兄クロード
……部屋に戻ったか…
あなた

あ、の……兄クロードさん…

兄クロード
あぁ……説明もしないでごめん、あなたさん。
大丈夫?怪我とかしなかった?
あなた

はい、

私が堪えると、兄クロードさんはソファに座った。
兄クロード
じゃあ、ちょっと説明するよ
兄クロードさんは私にも座るようにいってから話し出した。




三年前のある日に起きた事件の影響で。




シルクはリスナーを怖がるようになり。



重いうつ病になってしまったことを。



今ではだいぶ症状はマシになったが、時々先程のようにパニックを起こしたり。


急に呼吸が乱れたりするそうだ。


あなた

そんなことが……シルクさんに………

兄クロード
アイツもアイツなりに治そうとしてるんだが……。これ以上、一人じゃあ治しようがないと医者が言ってたんだ。
外に出て他人のコミュニケーションをとらないと……
あなた

変なこと聞くと思うんですけど……他のメンバーは……?

私がそれを聞くと、兄クロードさんは眉間にシワを寄せた。
兄クロード
アイツらは……三年前以降シルクと直接顔をあわせてない
あなた

え…?

兄クロード
全員、シルクが会おうとせず追い返して…
兄クロード
ここ最近じゃ、もうメンバーは来なくなった。
どうしてるかもおれはわからない…
兄クロードさんはハァとため息をついた。
兄クロード
あなたさん、頼みたいことがあるんだ
あなた

私に頼みたいこと……

兄クロード
最後の普通のリスナーのあなたさんに、シルクをもとに戻してほしい
あなた

シルクを、元に戻す…?

兄クロード
うん。
今、シルクの顔には笑顔がない。
昔みたいな表情に戻してあげてほしい
あなた

でもっ……そんなの私には……

兄クロードさんは頭を下げながら、私に頼み込んだ。
兄クロード
あなたさんじゃないと無理なんだ!
フィッシャーズファンの子じゃないと……
あなた

なんでフィッシャーズファンじゃないと駄目なんですか?

兄クロード
………3年前に起きた事件はフィッシャーズのリスナーが少し絡んでるんだ…。公には出なかったから知らないだろうが…
あなた

一体なにが……

兄クロード
それは………いや、これは俺じゃなくシルクに直接聞いてくれ。
俺じゃ駄目だ
兄クロードさんはそう言って、また深く頭を下げた。
兄クロード
明日また今日と同じ場所に同じ時間にいてくれ。迎えに行くから……。
どうぁ、シルクを頼む……
私は断ることができなかった。






シルクを、兄クロードさんを救いたくなった。






大好きな人を見放したりなんて出来ないから。






あなた

わかりました。これからよろしくお願いします

私はそう返事した。
















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