兄クロードさんに連れられ、私は兄クロードさんの家………シルクの実家にきた。
こ、こんなこといいのだろか……。
私は玄関からリビングへ通された。
リビングのソファに誰かが寝転がっていた。
寝癖がそのままになり、凄いことになっている黒髪。
人より厚めの唇。
眠そうに薄く目を開ける彼が………。
フィッシャーズのリーダー、シルクロードがそこにいた。
シルクは私を少し不審そうに見て、言った。
私が聞き返したが、シルクは答えない。
兄クロードさんが小声で小さく私に言った。
私も小さく返したつもりだが、シルクに聞こえてしまった。
シルクは私がファンだと知った瞬間、サァ……っと顔が青ざめた。
シルクは兄クロードさんに向けて怒鳴った。
そして、私から距離を取るように、後退った。
兄クロードさんも言い返すように怒鳴る。
シルクは兄クロードさんの言葉を聞いて、ますます顔を歪ませる。
私は困惑して小さく声を出すと、シルクはクッションを私に投げつけた。
当たらなかったものの、少し怖かった。
だが。
私に向けるシルクの表情は怒りではなく、恐怖の表情だった。
シルクはそのまま走ってリビングから出て行った。
私が堪えると、兄クロードさんはソファに座った。
兄クロードさんは私にも座るようにいってから話し出した。
三年前のある日に起きた事件の影響で。
シルクはリスナーを怖がるようになり。
重いうつ病になってしまったことを。
今ではだいぶ症状はマシになったが、時々先程のようにパニックを起こしたり。
急に呼吸が乱れたりするそうだ。
私がそれを聞くと、兄クロードさんは眉間にシワを寄せた。
兄クロードさんはハァとため息をついた。
兄クロードさんは頭を下げながら、私に頼み込んだ。
兄クロードさんはそう言って、また深く頭を下げた。
私は断ることができなかった。
シルクを、兄クロードさんを救いたくなった。
大好きな人を見放したりなんて出来ないから。
私はそう返事した。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。