これから久しぶりにデート。
渋谷で待ち合わせしていた。
いつも通りTSUTAYAのスタバ前。
『きた!!』
スーツ姿の彼が見えてきた。
『久しぶりだから楽しみだな』なんて思って逸る気持ちが
歩いてくる彼の表情にすべて落とされてく。
彼「ごめん。デートはいけない。」
わたし「え...仕事入っちゃった?」
彼は申し訳なさそうに眉間にシワを寄せてる。
『どうしよう、怖い。。。』
その後の言葉がこわくなった。
わたし「..なん?...で?...」
彼「...好きな人ができたんだ。...別れてほしい。」
8年間を一緒に過ごした彼に突然そう告げられた。
ただ、目の前が真っ暗になり、
その場で立ち尽くすことしかできなかった。
20代の殆どを彼と過ごしてきたんだ。
正直な話、
彼の気持ちの変化に気づかないはずがなかった。
嘘をつくときに、やけにおしゃべりになる癖。
近頃は何度も、何度も、何度も、その癖を見てきた。
それを見て見ぬふりをして、
『大丈夫。』なんて自惚れてた自分への罰だ。
私が無言の間にもその空気に耐えられないのか
彼は言い訳のように、
ずっと、私の顔を見ないまま、話続けている。
彼「....会社の後輩で.....もちろんまだ付き合ってないけど、お互い惹かれあってる....」
『....もう聞きたくない。』
心が辛い。そんな話まで聞けるわけないじゃない。
私「もう、わかったから...それ以上は...やめて。」
私「8年間、ありがとう...さよなら。」
とにかくもうそこにいたくなくて、遮るように...
あっけなく終わった。
彼と別れて、『帰ろう』と歩き出した私に聴こえたのは
ひとりの女性を一途に想ったラブソング。
「シンデレラガール」だった。
街に響き渡る雑音のなかでいっそうはっきりと響いてくる
その美しいメロディ。
『...King&prince??』
新しくジャニーズからデビューしたグループらしい。
この数週間後に彼らと会うなんて
この時は知らない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。