私は予め設置しておいたカメラで、オールマイトとオールフォーワンの戦いを見る。
AFO「__…渾身。それが最後の一振だね、オールマイト
手負いのヒーローが最も恐ろしい。
腸を撒き散らし、迫ってくる君の顔。今でもたまに夢に見る。
2、3振りは見といた方がいいな」
……一応計画の説明をしておこう。といっても至極単純だ。
原作通りオールマイトがオールフォーワンを倒す。
オールフォーワンが力尽きて倒れた時、私は彼を攫う。
「次の悪の根源は自分だ」と言って。
その後は予め用意しておいた教会の部屋で拷問。…死柄木には悪いが。
拷問の際には絲賀見商社自家製の、死穢八斎會とは違う個性を消滅させる薬を投与する。
え?ちゃんと効くのかって?……さあ、まだ試した事は無い。
オールマイト「United Statesof SMASH!!!!!!」
_…オールマイトがオールフォーワンの上で、スタンディングをする。
あなた「……さあ、計画実行だ。」
私は影に身を投じた。
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メディア『敵は__…動かず!勝利!オールマイト!!!
勝利の!スタンディングです!!!
______…あれ、何処からか少女が出て来ました…体育祭優勝者の子です!』
オールマイトが敵から離れた時、少女は現れた。
あなた「諸悪の根源もこれで終いか!オールフォーワン!!」
ヒーロー「…?!一体何処から!!」
あなた「お疲れ様平和の象徴!最後の戦いはどうだった?民の為に体を張れてよかったか?!」
少女は不敵に笑ってオールマイトを見る。
オールマイト「__…君は…篠陰少女!!!」
あなた「嗚呼、オールマイト。アンタは凄い、私も感動して鳥肌が立っちまったよ!!」
でも、と少女は声をあげる。
あなた「コイツは私が攫っちゃうね」
ニヤリと笑って、少女はオールフォーワンの襟を掴んで持ち上げる。
あなた「いいか、聞け。次の悪の頂点は、この私。スカトだ!!!!!!」
ヒーロー達が飛び出し、捕らえようとする。
が、少女はオールフォーワンを連れて、影の中へ沈んで行った。
ヒーロー達は絶叫する。オールマイトも絶望した顔をして、少女のいた方向を見る。
そこには"元"諸悪の根源、オールフォーワンの血痕しか残ってはいなかった。
_____その日、次なる悪が面を上げた__……。
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あなた「目が覚めたか、オールフォーワン」
金属製の椅子に拘束された男が、ピクリと動く。
先日の計画は成功。教会の地下室に上手く閉じ込め、薬で個性を消した。
AFO「…此処は何処だい?君は声を聞くに…体育祭で優勝した篠陰あなたさんかな?」
あなた「ま、知ってるか…。優勝も予定のうちだったが。」
AFO「それより君が僕を助けてくれたのか?嬉しいな_…」
私はオールフォーワンの口に刃を入れる。
あなた「助けた?夢から覚めろ、んな訳無いだろ。」
AFO「…酷いな、私と君が手を組めば、ヒーローなんて簡単に潰せるのに」
あなた「残念ながら、お前はもう無個性だ。」
AFO「__…なんだって?」
あなた「うちの会社で作り上げた、個性を消滅させる薬。それをお前に投与した。」
AFO「そんなまさか_…!」
あなた「へぇ、アンタの焦る姿なんて初めて見たよ。」
AFO「…何が狙いなんだい?君の今の心拍数はとても穏やかだ。」
あなた「私のお前に対する目的はただ1つ。篠陰天滋の死の真相を話せ。」
そう聞くと、オールフォーワンはああ、と懐かしそうな声を出す。
AFO「篠陰天滋!懐かしいな、彼には悪い事をした…。」
私は椅子の肘掛に置いてあるオールフォーワンの手の甲にグサッとナイフを突き刺す。
少し我慢するように、オールフォーワンは痛々しげな声を出した。
あなた「全て話せ。さもなくば敵連合もドクターとやらも全員殺す。」
AFO「へぇ……弔と君は仲が良かったはずだが__…グッ…」
爪をゆっくりと剥がす。
あなた「死柄木弔…彼はいい人だ。噂で聞いたが、私を連れ戻す為に戦力を拡大してるとかなんとか……。」
AFO「素晴らしい友情、だ……グァッ…彼らの思、いに答えてはやらんのか?」
そう言ってオールフォーワンはニタリと笑う。
あなた「お前の笑みはつくづく私の神経を逆撫でさせるな」
また爪を1枚剥がす。痛々しい声が地下室にこだました。
あなた「さっさと話せ、嫌がらせか?」
AFO「求められている情報程話したく無くなるよ、篠陰あなた。」
あなた「…そうか、ならもう少しクスリを入れようか。」
私は個性でドクターの所にワープする。
ドクター「_?!な、なんだきき貴様!!!何処からっ__…」
あなた「悪いな、アンタが必要なんだ」
一瞬で首を切り、その頭を掴む。
AFO「おや、帰ってくるのが早かったね____…っ!ドクター!!」
ドクターの首を見て、オールフォーワンの顔から笑みが消える。
あなた「_嗚呼…彼に罪は無かったというのに……」
血がぼたぼたと垂れるドクターの頭をオールフォーワンに突きつけた。
AFO「_…っ分かった、彼の死について話そう。」
あなた「物分りが良くて助かるよ。」
手にしていた頭を部屋の角にポイッと捨てる。
AFO「…篠陰天滋、彼は無個性の天才格闘家と呼ばれているね。でも彼は元々有個性だった。
彼が無個性だと言われるようになったのは、僕が彼の個性を貰った…いや、奪ったと言った方が正しい。
彼の個性は「超回復」。当時のオールマイトとその師と戦って瀕死だった僕は、彼の個性を欲した。
そこで僕は彼を嵌め、彼の個性を奪い、捨てた。」
AFO「篠陰天滋、彼は私への復讐を心に決めた。…が、無個性で特技が体術でしかない彼は、私には勝てないと判断したらしい。そこで……
君を引き取った。己の最強の駒にするために、ね。
だが彼も育てて行くうちに情が湧いてしまった様だ。」
そう言ってクククと笑う。
AFO「…君は強くなりすぎた。スカトの名を聞いて篠陰天滋の息子だと直感的に分かったよ。
僕はどうにか手を回して君を消そうとした…が、篠陰天滋はそれに気付いたようでね。
君に仲間を増やさせたのも、1つの企業を後ろ盾に出来るようにしたのも、篠陰天滋の計画だ。」
AFO「君は味方を多くつけ、強い力で統制した。強い人とは味方の多い人だ。
そんな君に唯一弱点があるとしたら__」
あなた「_肉親って訳か…」
AFO「その通り。彼は君を守る為に、唯一の弱点である己を殺した。
本当に優しいな、あの男は!どうだい、自分の為に死んだ事に後悔を__」
あなた「…ははっ…あははははは!」
私が絶望する様を見たかったからなのか、笑う私を見てオールフォーワンは驚いたように言葉を止める。
あなた「後悔?笑えるね、そんな訳ないだろ!本当にいい叔父を持った。
私の為に死ぬなんて、馬鹿じゃないか?阿呆で間抜けないい男だったな、本当に!」
__本当に、馬鹿で阿呆で間抜けなクソ野郎。
あなた「ありがとうオールフォーワン…君が教えてくれたお陰でとてもいい気分だ。
お礼として……」
私は影で作った刃をオールフォーワンの首元に当てる。
あなた「苦しまずに逝かせてやる」
AFO「待っ____」
薄暗い部屋に、何かが落ちた音と血飛沫が飛び散った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。