床に転がる2つの頭を見て、私は乾いた笑みがこぼれる。
口は笑っているのに、涙が止まらない。
叔父は私の為に死んだ。最低な冥土土産だ。
私は手に着いた血を拭き取り、自分の手に手袋をはめる。
_レアンに片付けてもらうよう連絡しなくちゃな…。
しかし携帯のボタンを押す気力も出ない。
ホークス「篠陰さん……!」
私が地下室を出て壁にもたれかかっていたら、いつの間にか居たホークスが心配そうに声をかけてくる。
ホークス「顔色悪いですよ…。それより、血の匂い…オールフォーワン殺したんですか」
私は伸びてきた手を振り払い、目を逸らしながら笑う。
あなた「ニュース見たんだね…。そうだよ、殺した。生かすと思ってたの?」
私は今酷い顔なのだろう。彼の目がそれを物語っている。
あなた「…ほら、もう行って。人殺しにかける情なんてないでしょ……。」
私がそう言うとホークスは私の肩を掴んで、自分と目が合うよう正面を向かせる。
ホークス「っそんな顔してるのに放っておけるはずないでしょう…!」
そう言って私を抱き寄せる。
あなた「流石ヒーロー…お節介だね……」
ホークス「ホント、職業病みたいなモンですよ」
私は彼の腕の中で、目頭が熱くなるのを感じる。
あなた「…胸、貸してくれない?」
ホークス「ドーゾ、好きなだけ」
熱い雫が、溢れるように私の頬を伝った。
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ホークス side
ニュースでの篠陰さんの布告に、椅子から転げ落ちるほど驚いた。
何より諸悪の根源、オールフォーワンを颯爽と攫って行った事だ。これに関しては問い詰めなくてはならない。
未だ分からない彼女の目的。
僅かながらの不安を抱えながら、いつも通り教会を訪れた。
子供達からの遊びの誘いをかわしながら篠陰さんを探す。
やっと見つけたと思えば、酷い顔をして壁にもたれかかっていた。
その近くにあった地下室の扉からする鉄臭い匂い。血だ。
俺は咄嗟に篠陰さんへ駆け寄る。
まるで取りつかれたように篠陰さんは自分の手を見つめていた。
__このままでは死んでしまう
あれは洗えない手を見た殺人犯の目だ。
絶望し自害する__止めなければ、と即座に思った。
掴んだ肩は恐ろしく冷たく、彼女の金色の瞳もまた、冷たく光を宿していなかった。
__人殺しにかける情なんてないでしょ……
そうかもしれない、でも今の貴方は…弱々しい少女にしか見えないんだ。
……彼女の理解者になりたい。力足らずでもいい、守りたい…。
きっとそれは、烏滸がましい考えなのだろう。
俺は優しく彼女の震える身を抱いた。
胸元が少しずつ濡れるのを感じながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。