第57話

約束
656
2023/01/29 14:36
 柏木side



  あの日、

  私はいつも通り鼻歌混じりに家の扉を開けた。


戸川 湊
 あ、

  当時付き合ってた彼が他の女を抱いていたけど、

  その時は、凄く悲しかったけど
和泉冴羅
 良かったじゃん別れれて!!
付き合ってても時間の無駄だったんだよ!
  なんて言って励ましてくれる親友が居たから

  直ぐ立ち直れたし、

  まあ、そういうこともあるよねなんて

  自分に言い聞かして、

  少し苦い思い出として頭の片隅に残した。

  そんな時、ミセスに出会った。

    Baby 偽らないで

    自分を忘れそうなら

    そんな奴らとは離れなよ

柏木あなた
 Mrs. GREEN APPLE…、 

  自分と生年月日が同じ人を調べていた

  ただそれだけだった。




  1996年9月14日産まれ


     女優    柏木あなた

  バンド ボーカル 大森元貴

     …
   
柏木あなた
 大森さん、… 

  ほんの少しの出来心で、

  検索にかけて、

  ミセスの楽曲に出会って

  毎日が彩られて、キラキラしてる様に思えて
  そんな歌詞を生み出しているのが

  自分と同じ年齢の大森さんだと言うことを知って

  凄く尊敬して、彼の作る音楽に惹かれて


  ある番組で実際に大森さんと会って

大森元貴
 柏木さん!笑 


  気付けば好きって実感していて
  気付けば、今、隣に居させて貰ってて
柏木あなた
 大森さん、… 
大森元貴
 ん?、笑 

  優しく微笑みかけてくれる大森さんに

  毎回胸が鳴って
  他の女性と話してたりするとちょっと

  胸が締め付けられて
柏木あなた
 ズルいですね…ほんとーに、 

  過去の辛いことなんて

  ちっぽけなものにしてくれる大森さんが
大森元貴
え?笑 
柏木あなた
 大好きです、
大森元貴
 知ってますよ、笑 

  そんな所も好きで、

  なんて、本当にどうかしている…
  瀬戸さんとの一件で、

  少し濁った空気が私たちの間に出来た。

  それは、瀬戸さんの存在のせいじゃなくて

  私がその事で、大森さんの前で泣いてしまったから

  大森さんは黙って背中をさすってくれてたけど

  きっと良い気はしてなかったと思う。

  前までは気にしてなかった沈黙に

  気まずさを覚えた。

  今、彼は何考えてるんだろうって

  不安になったりする。
  もしかしたら、飽きられちゃったかも

  瀬戸さんに未練持ってるって思われたかも

  そうじゃないのに、

  私が泣いたのは

  瀬戸さんとの関係が原因じゃないのに。

  きっと誤解させてしまったような気がして
柏木あなた
 …、
  あの日泣いたのは、

  大森さんが離れていっちゃう様な気がしたからで
  
  そんな事思うと、また涙が止まらなくなって
大森元貴
 柏木さん、?… 
柏木あなた
 っ…泣 
大森元貴
 、…
  また、困らせてる…
柏木あなた
 、大森さんっ… 
大森元貴
 ん、? 
柏木あなた
 貴方のせいで、凄く凄く辛いです…っ 
大森元貴
 え、っ 
柏木あなた
 、最近ずっと、っ…
大森さんが、離れてっちゃう気がして、っ
柏木あなた
 凄く怖い…、っ…泣 
大森元貴
 柏木さん、?、… 
大森元貴
 僕は、ずっと傍に居ますよ 
大森元貴
 絶対、離しません…、貴方を 

  優しい香りに包まれて

  また視界が滲んで

  なんか、私、弱くなった気がする
大森元貴
 死ぬまで一生傍に居るから、
大森元貴
 死んでも一緒に居てください、笑 
柏木あなた
 …うん…っ、泣 
大森元貴
 んはは笑 やった、笑 


  大森さんの笑い声が響いて

  間の空気が軽くなった気がした。


大森元貴
 約束ですよ、? 
柏木あなた
 はい、約束です、笑 


  そう言って、小指を絡めた。








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