第65話
#65
【チクチク】sideあなた
MV撮影___
監督「…はい、カットー!次はー……」
カットがかかれば、
メンバーの元へメイクを直しに行くナナちゃん。
カメラ越し、モニターを見ながらの私は
ナナちゃんが壱馬に触れた時、目を逸らした。
:
壱馬「あなた?」
『はいっ、』
ぐるんと思い切り振り返れば、
至近距離にある壱馬の顔に驚いて後ずさる。
壱馬「ちゃんと見てたかこのヤロ」
『え?』
壱馬「俺頑張ったのになぁ」
『見てたよ!かっこよかった』
そ?って満足そうに笑う彼は楽屋のソファに寝転ぶ。
あの時、目を逸らしてしまったのは
ナナちゃんの気持ちを知ってしまったせいだ。
チクチクと、細い針で刺されるような感覚。
昂秀「胸痛いんすか?」
『はっ、?』
昂秀「あ、いや、押さえてるから」
『あっ…これね、ううん、べつに??』
そうですか、と
隣に置いてあったドリンクを取っていく昂秀。
……ナナちゃんに、言うべきなのかもしれない。