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2020/05/11

第3話

003
コンコンコンコン

「零様、失礼します。」

作法の先生が帰った後、深山が俺の部屋のドアを軽く叩く音が響いた。

ちゃんと4回叩くのは流石だなぁ、なんて考えていると、ドアがガチャっと開く音がする。

「零様、明日のご予定の確認に参りました。」

「ん」

俺は椅子に座り、深山に背を向けたまま短く返事をする。
態度こそ素っ気ないが、大好きな顔がすぐ後ろにあると思うと口元が緩むのを感じ、慌てて背筋をピンと伸ばす。

「明日は学校からお帰りになられた後、ダンスのレッスンがございます。」

「ん」

「その後は家庭教師の先生がいらっしゃいます。」

「…坂田先生だっけ」

「はい」

今まで俺を担当したいた家庭教師の先生は先月赤ちゃんを出産したため、今週から育児休暇をとっている。そのため、明日からは坂田先生という先生が代わりに俺の家庭教師をするらしい。

確か20歳だと言っていたのを思い出す。
家庭教師は時給高いからアルバイトにはもってこいだ。

前の家庭教師の先生は少し厳しかったから坂田先生は優しいといいなぁ、なんて考える。

「…では、ご報告は以上になります。」

「あ、まって」

姿は見えないものの、遠ざかる深山の足音が聞こえ、俺は後ろを振り向き咄嗟に引き止める。

「はい、なんでしょうか?」

控えみな微笑みを魅せる深山に俺ははっと息を飲む。
ここで深山を引き止めておいて、俺は一体何がしたかったのだろうか。
1分前の自分の行動が理解できない。

何を言おう。どうしたら…

「あの、さ、」

「はい」

「明日、家庭教師が帰ったら」

「はい」

深山の綺麗な瞳に見つめられ、テンパった俺は咄嗟にある約束をしてしまった。

「ここに深山“だけ”来てよ」

“だけ”を強調し、俺は赤くなった顔を隠すように背を向ける。

今みたいに次の日の予定の報告をする為に俺の部屋を尋ねる時は、いつも深山の他に執事やメイドが2人ほどついてくる。
ほら、今だって深山の横には強面執事が2人。

「ここって零様の部屋ですか?」

「うん」

「…分かりました。」

深山は軽く目を見開き、驚いた顔を見せたが直ぐに元の表情に戻って、恭しくお辞儀をする。

「では、失礼します。」

パタン

扉が閉まる音を合図に俺はベッドにうつ伏せで倒れ込む。
洗濯されたばかりの布団の暖かい匂いが鼻をくすぐり、さっきまでバクバクと鳴り響いていた心音が少し落ち着いてきたように感じる。

明日、家庭教師が帰った後、
俺の部屋に俺と深山の2人きりで。

俺はとんでもない約束をしてしまったようだ。