私が口を開こうとすると女の子は私の頬を殴った。
その日初めて私が嫌われている理由がわかった。
「強いから」だ。
私が強いせいでみんなが弱く見える。
シスターからすると私が普通、他のみんなは普通なはずなのに弱いと思われてしまっていたのだ。
「七瀬みたいに強くなりなさい」
「どうして七瀬は出来るのにあなたはできないの?」
「普通のことも出来ないなんて……情けない」
私の見えないところでみんなは貶されて生きてきたらしい。
そうだ……私のせいじゃん。
私が弱くなれば……っ!
弱くなればみんなを楽にさせてあげられる。
ごめんねみんな。
私が、
私が今までみんなを苦しめきたこと、
今ここで償うから。
私は時が経つことを利用して少しずつ力を弱めていった。
もちろんシスターはそれを信じ込んだよ。
だからみんなは楽しく生活できている。
私以外は、ね。
弱くなるにつれてシスターたちは私を奴隷のように扱うようになった。
昔だったらみんなでご飯を作ったりお皿を準備したりしていたはずなのにそれは全て私の役目。
小さい子の子守りも、洗濯物を干すことも、部屋の片付けも全て私。
数人だったらまだこなせるよ。
でもそれが何百人もの子供の分だったら?
それを全て私がやっている。
疲れるけど、
嫌だけど、
我慢するしかないんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。