第31話

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2019/08/12 08:38
駅のホームに入るとサァッと涼しい風。


前を歩く裕太さんの赤い髪の毛が揺れる。


些細なことでも裕太さんはかっこよく見えるのだ。
私の定位置は裕太さんの斜め後ろ。


ここは絶景ポイント。


横顔が見える見えないかのところが凄く好きだから。
でも、たまに失態もありつつ…
中務裕太
なに?
あなた

いやっ…なんでもないです!

目が合ってしまうこと。


嬉しいんだけど、バレちゃ恥ずかしいじゃん。
何も話さなくても私の心臓はバクバクと音を立てている。
ポケットに手を入れて寒って、首を服に埋める仕草。


携帯は絶対触らないんだよ、裕太さん。


私といる時はそうしてくれているのかな、


そんな、勘違いでも嬉しい。
ずっとこうしてたい。
中務裕太
あ、来たで。
あなた

寒いですね。

中務裕太
ほんまそれ。
谷寒くないんかと思っとったわ。
あなた

私?

中務裕太
顔赤いしぼーっとしとるで逆に暑いのかと。
あなた

え!赤い!?

中務裕太
うん、ほっぺた。
私、裕太さんのこと見すぎた…


だから赤くなってるんだ。
手でほっぺたを挟むと手は冷たいそうで


じんわりとほっぺたの温度が手に伝わる。
中務裕太
…気持ちよさそうやな。
あなた

え?

中務裕太
ほっぺた。
私のほっぺたを見てニヤッと笑った。


ちょうど電車が目の前に来て乗り込んでいく。
やばい…そろそろ寿命縮まりそう。
また、高鳴る胸を抑えて裕太さんの後に乗った。
9時半の電車。


人はまあまあ居て
座る席はない。
中務裕太
なんや、座られへんのか。
あなた

…みたいですね。

中務裕太
大丈夫?
あなた

え?

中務裕太
熱あるんちゃうの?
あなた

熱?

中務裕太
顔赤い。
あなた

あ ~ あ ~ !なんでもないですよ!?

勘違いされてた…


私、熱あるって思われてたのかぁ…
パタパタと顔を仰ぐと
私のおでこに触れた大きな手。
あなた

っ…!?

中務裕太
ん ~ 、ないわ。
一旦、フリーズ。
今っ…今っ…私の、おでこに…触った裕太さんの手。
熱い…熱いよ。


裕太さんが触った私のおでこ全体。
すっかりたんこぶも無くなってよかったって思ったのに


裕太さんが触ったおでこ、次は熱を持ち出す。
中務裕太
…谷?
あなた

はい?

中務裕太
今日のお笑い録った?
あなた

えっ、今日土曜日…

中務裕太
今日3時間スペシャルやで。
ガーン。


すっかり忘れていた。


裕太さんのことばっか頭にあったせいで


そんな、お笑いのことなんか微塵も頭になかった。
あなた

何時からですか!

中務裕太
8時。
あなた

あ、オワリマシタ。

前のは録画したけど今日のは絶対欠かせないって思ってたのに ~ 。
中務裕太
うちで見る?
あなた

…はい?

いやいやいや、


いくらなんでも好きな男性の部屋で一緒に観るなんて


絶対ありえないし、集中出来ない。
中務裕太
みたそうな顔してるから。
あなた

ま、まぁ…見たいんですけど
さすがに裕太さんの家に上がるのは…

中務裕太
あ、うちって言っても龍友くん家ね。
あなた

あ、え?

中務裕太
ふっ、変なこと考えてんのかぁ ~ 。谷ちゃんよ。
あなた

や、やめてくださいよ。

中務裕太
んで、どうする?見る?
裕太さんだけじゃないならまだ大丈夫かも…
あなた

はい!見ます!

よし、分かった。


そう言って久しぶりに見た裕太さんの携帯。
龍友さんに連絡するのかな…
文字を打つ裕太さんの手。


男らしい、ごつっとしてるけど細くて綺麗。
中務裕太
…あ、待てよ、龍友くんやん。
あなた

はい?

中務裕太
…んん、なんでもない。
はぁ、幸せ。


明日、休みだしこんな贅沢怖いなぁ。

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