授業も入ってこない。
次テストなのに…
また、亜嵐に馬鹿にされるよ…
授業を終えて片付けていたら
そう隣で呟いた裕太さんが私と目を合して微笑んでくれた。
わぁ…
心臓が止まらない。
ドキドキ言って、おさまらない。
頭の痛みも治まらないけど
心の痛みも治まらない。
思わず手が止まって
声に出していた。
そしたら、裕太さんは後ろ姿だけどコクリと頷いて
大きな声の龍友さんが私と莉子に手を振った。
一瞬、裕太さんと目が合った気がした。
…そんなことないか。
自意識過剰…だ!
ほんの少しだけ頭の痛みを忘れかけていたけど
戻ってきた…
授業中、裕太さんと頭痛のことがいっぱいでそんなこと忘れていた。
莉子にちゃんと話した。
莉子は相当のおしゃれさんで
よく、ネットとかで服関係のお仕事の依頼も
貰っているらしい。
だけど、それを受け取らないのも莉子らしい。
授業を終えて
莉子にバレないようにこっこりと頭痛剤を買って飲む。
これでちょっとは緩和されるよね。
そして、私の家を興味深そうに入ってきた。
お決まりの莉子の甘党。
必ずコーヒーを飲むときは砂糖二個。
キッチンで1人になった時。
やっぱ、頭痛は薬では治らない…
お願い、治ってよ…!!
お盆に私と莉子のコーヒーと莉子の砂糖を持っていく。
はぁ、私こんな調子で裕太さんと一緒に居られるだろうか。
そのことが心配で
服なんか正直どうでも良くなった。
ただ、裕太さんの目の前にいる私が
正常であって欲しい。
なりたい。
その一心だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!