第35話

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2019/08/13 14:46
手伝いの帰り。


リュックに入れて置いた本を取り出す。
電車の中で読もうかな。
片手に本を持って電車に乗り込む。


今日は珍しく空いていて楽に座れた。
そして1ページめくる。


本だなぁ…


分厚いし…


だから、本は読もうと思わなかったんだ。

"  勇者 、ミュージャ。

そんな彼に立ちはだかる高い壁とは ──── "

何だこの読みたくなる感じは。
あなた

…裕太さんにしよっと。

名前を裕太さんと置き換えた。


その方が読む気増すからね。
そして、黙々と私はページを開く。


今頃珍しいかな、本なんて。


現代、携帯が当たり前な世の中になってきて


最近では本を読んでいる人を見かけなくなった。


本だって携帯でも見ることは出来るから余計。
そんな携帯社会の中、私は本を読んでいる。


なんか、抵抗してるみたいでドキドキする、
あなた

ふふっ、

たまに笑ってしまい、声に出る。
隣近所からは白い目で見られるけど気にしない。
なんて時間はあっという間。
本についていた紐を挟んだ。
電車を降りると寒いホーム。


慣れてるはずなのにな。


おかしい。
すると
白濱亜嵐
あなた?
あなた

え?亜嵐?

白濱亜嵐
何してんの?一人で。
あなた

あの、春ちゃんに呼ばれて手伝ってた帰り!

白濱亜嵐
春ちゃんって、春子さん?
あなた

そうそう。

白濱亜嵐
へぇ!
あなた

亜嵐は?何してるの?

白濱亜嵐
ここの近くに喫茶店できたから
そこで勉強でもしよかなって。
あなた

うわ、変な時に真面目。

白濱亜嵐
うっさいなぁ。
卒業出来なかったら嫌だから。
あなた

…それ私に言う言葉ですか!?

白濱亜嵐
ふふっ、そうだよ。
あなた

私だって必死に勉強すれば亜嵐なんか余…

白濱亜嵐
今回の小テスト。
その言葉を出されると閉じたくなくても開かれなくなる口。


実は、ずっとずっと亜嵐に点数は負けている。


こんな陽気な亜嵐だけど意外と頭良くてムカつく。
あなた

もう、その縛り飽きた!

白濱亜嵐
仕方ないじゃん。
毎回そうなんだから。
あなた

わ、私だって本読むもん。

白濱亜嵐
は!?本?
片手に持つ本。
あなた

ほらね?

白濱亜嵐
あなた、なんか変な薬でも飲んだ?
あなた

どして?

白濱亜嵐
あなたが本とかデスノートしか思い浮かばない。
あなた

ちょっと失礼だなぁ!

やっぱ、それほどほんの印象は変な方向みたい。
白濱亜嵐
赤髪…ね?
ぼそっと呟かれた言葉は私には聞こえなかった。

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