裕太side
谷告白されたんやと。
なんや、このモヤモヤは。
妹に彼氏が出来てしまった悲しみ…か。
複雑な思いが入り交じる中
笑顔でホイホイと接客する谷を目で追う自分がおる。
おっかしい、
最近思い始めてきとるんやってな。
大学でも会わへんかなってちょっとよそ見してみたり
前みたいに偶然席隣になるかもしれへん
って、服に気合い入れたりしとる自分がおって怖なる。
…変な客に絡まれてないやろうか。
泣きそうになってへんかな。
いちいち、あいつの事が頭に浮かんでくる。
不意に見る谷の笑顔に心で変な波が打った。
でも、谷には亜嵐くんというイッケメンな彼氏がおるし
俺には無理。
だから、この気持ちに気づいたらあかん。
口に出さずにひっそりと秘めておく。
誰かに言ってしまうと認めしまうやろ。
今日もなかなかの忙しさ。
谷がバイト初めてから店の売上が伸びてきて
店長も大喜び。
…実は、俺もやったり。
…きっも。
自分らしくない自分といざ対面した。
嫌やわ、まじ。
頭につける布巾を取って頭を下げる。
いつもみたいにカウンターに腰掛けて隣で座るんよ。
可愛いやろ。
結構前にやったから理由までは覚えてへんけど
なんとなくなら…
あんなに人見知りな俺がつっこむまで仲良くなった。
めちゃくちゃ嬉しい。
そう横でニコッと微笑む彼女にまた大きな波が打つ。
これ以上見られたら見透かされそうな感じで怖かってん。
谷だけには
可愛い
じゃなくてさ、
かっこいい
って思われたいやん。
完璧、、そうなっちゃった自分を目の当たり。
好きなんか?
谷のこと。
自問してみるが帰ってこない自答。
ぽんとフワフワな髪の毛に手を乗せたら
顔がどんどん赤くなっていく。
…可愛いやつやわ、ほんま。
お兄ちゃん本能発揮する。
ドンと出てきたおにぎり。
いただきます。
そう言って口の中に入れると俺は美味しい。
梅干しの酸っぱさが疲れを癒してくれる。
けど、隣のハムスターはちゃうみたい。
店長、同感っす。
ごくごくと辛そうに飲む彼女を見てたら
無性に触れたくなってん。
怖いぐらい、好きなんやって。
優しく谷の頭を上から下へ撫でていた。
けど、口に出すと止まらへんくなるで絶対言わへん。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。