裕太side
ノリで誘ってみたけど
ちょっと、今、余裕がなくなってきた俺。
…可愛すぎんねんけど。
聞いてへんよ。
そう俺の横からちらっと顔だけだして
見つめてくるんも、心臓に悪いねん。
…やばい
谷に見透かされたくなくて隠した。
…いつも斜め後ろを歩く谷なのに
今日はちゃんと横を歩いてくれる。
…誰にも渡したくない。
俺だけのものに…
完全、谷の事が好きやん。
…好き
そう実感すると谷の顔を見てたら自分の顔が赤くなるのを感じ、
咄嗟に、谷の目を塞いでいた。
…熱い、谷。
こんなだっさい姿見られた無い。
ショッピングモールの外に出ると冬の夜でめちゃくちゃ寒い。
今にでも雪が降ってきそうな空気。
冷たくて
切ない
そんな空気。
しばらく歩いて、谷の駅に着いた頃。
谷を横目で見るとこんなに寒いのに顔を真っ赤にさせてる。
こんな寒いのに暑いっておかしない?
え、もしかして
コクっと頷いた谷。
谷のおでこに触れると火傷しそうな程の熱さで
へへっと笑うから
なんで、気づいてあげれへんかったんやろうか
自分を責める。
おぶって帰ろ。
そういうと、更に顔を赤くして横に首を振る。
早くしんと、更に悪化する。
無理やり谷を俺の背中に乗せた。
重い重い心配してくるけど全然軽い。
熱を持ってる谷の体から熱い熱が背中に伝わってくる。
相当やな、これ。
歩いてたらスースーと可愛らしい寝息が聞こえてきて
思わず、笑ってしまいそうになった。
できるだけ早く谷の家に着いたけど
鍵も持っとるわけないし、
ちょっと戸惑う。
起きようとするで
ごめんなさい、とか細い声の谷。
熱い手から鍵をもらって開ける。
谷に言われるまま、寝室について谷をベッドに下ろす。
布団を掛けてやって、
キッチンを借りて
おでこに冷えピタを付けさせた。
谷が着替えて、化粧落としてた。
女子って大変や。
熱でとろんとしている目で俺の事を見つめる。
あ ~ 、それあかんて。
いくら俺やからって信用されても一応男やねんで。
布団をぎゅっと握る谷。
…やばいなぁ、これ。
よかった、そう微笑んだ谷。
谷の横に座っておでこを撫でた。
近くで見るともっと可愛く見える。
いつもは化粧でより可愛いけど
すっぴんはすっぴんで幼くて可愛い。
長いまつ毛とちっさな鼻。
白い肌。
触りたくなってしまうようでめっちゃ魅了される。
あまりにも見つめてしまって
そうですね、と笑う谷を想像していた。
けど、想像を遥かに超えて
なんて、爆弾を落とし続ける谷。
可愛いこと言うなよ、ほんまに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。