目を覚ますと見覚えのある天井と、硬い地面に倒れたはずなのに柔らかい布団にくるまっていた
隣では伊之助と炭治郎が寝ている
伊之助は見るに痛々しい傷を負っていた
大きないびきだな、と少し笑ってしまった
布団から出て縁側に座る
俺は大変な事をしでかしてしまった
友がやられているのに1歩も動けず、しまいには自我を失って炭治郎を襲った…
許されることなのだろうか?
いや、そんなはずはないと首を横に振った
あの時の気持ち悪い感覚を忘れられない
全身から熱い湯が湧くような感覚
直後の記憶はないが、気がついたら炭治郎の首に噛み付いていた
炭治郎は泣いていた
でも抵抗せずに俺を強く抱きしめていた
優しさゆえに自分を犠牲にしてしまう炭治郎
このまま俺が気が付かなかったら、炭治郎は死んでいたに違いない
なんて顔をして会えばいいのかわからなかった
このまま切腹だろうか…
悪い考えばかりが頭をよぎった
そう言って炭治郎は俺を抱き寄せた
自分の息が荒くなっていたことに今気づいた
涙が溢れて止まらなかった
こんな俺でも、受け入れてくれるのかと思うと目頭が熱くなった
炭治郎からは今まで聞いたことないくらい優しい音がした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!