彼女の視線を辿った先には
" 顔面国宝 " のあだ名で有名な
きむてひょんが 。
確か彼奴は 、
いっつも1人で
愛嬌もなければ笑顔も見せず
万年真顔の無愛想な奴だ
君はそんな奴を
わぁ 、かっこいい … なんて
きらきらした目で見つめちゃって
そう 、こちらをちらりとも見ず答える
女たらしの愛嬌まみれな野郎かと思ったら
今度は無愛想な野郎
他には塩な性格の猫顔な先輩
勉強以外ならなんでも出来る可愛い顔した後輩もだっけ
そいつらの共通点といえば
イケメンだ 、ということ
大学に入ってから見た目にも気を使うようになって
重度のアニオタからも脱して
すっかり変わった 、と思ったのに
ミーハーな所だけは全く変わってなかった
まるで宗教だ
イケメンという偶像を崇拝する宗教 。
僕だってイケメンで有名ですけど 。
そう言おうとした一歩手前で言葉を飲み込んだ
それと共に胸に浮かぶもやもや達
こんなの 、君に好かれたいみたいじゃん
そう返してこっそり彼女を盗み見る
やっぱり 、絶対無い
今まで幼馴染としてやってきたんだ
その関係はこれからも変わるはずない
けど 、君から香るシトラスが
どうしても気になってしまって
胸が高鳴ったのは
気の所為ではないだろう
べし 、と肩を叩かれる
それから数日後
彼女が僕を崇拝しだしたのは
だいたい想像がつくだろう
その先は 、また半年後の話 。
end
胸きゅんって程ではなかった 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!