第107話
禁断の恋 jm
明るい照明に 、アルコールの匂い
キラキラと光る腕時計を見れば
8:00を指す針
もうすぐだ
古びた扉に視線を移せば
きぃ 、と軋む音を立て 、ゆっくりと開く
ふわ 、と少しカールのかかった栗色の髪に
白くて綺麗な肌
そう 、声をかければ
嬉しそうに顔をほころばせる
… あぁ 、可愛い
溢れそうになる気持ちは押さえつけて 。
細い腰に手を回し 、ゆっくりと歩く
ふわ 、と香るホワイトムスク
雰囲気も 、笑顔も柔らかくて
そんな彼女に一目惚れして
けど 、分かってる
これがいけないってことくらい
なぜか 。
それは 、僕が契約書にサインしたから
" お客様と恋愛関係に発展しないこと "
お金が必要だった僕には 、この道しか無かった
今だって 、教養も能力も
全部全部無い
あるのは 、女の人を喜ばせる愛嬌だけ
だから 、この仕事を続けるしかない
せめて 、ホストとしての寿命が来るまで
そう言って 、ぎゅ 、と抱きついてみる
これは 、ホストでも許されない行為だろうか
けれど自分なりに線は引いているつもりだ
前 、ひょんに
と言われた時から
やっぱり僕には無理か
そう 、少しは目も覚めた
けれど 、僕はそこまで割り切れるさっぱりした人間じゃない
せめて 、彼女が 、この店に来なくなるまで 。
僕が 、この店を辞めるまで 。
僕たちが 、会わなくなるまで 。
彼女の目に 、僕が映らなくなるまで 。
end
前回の続きのようなものです