ドライヤーを止めて
彼の髪に触れると彼はゆっくり私の方を向いた
樹「ねぇあなた」
今まで聞いた中で1番優しい声
優しい表情
そっと私の頬に手を添えて言葉を続ける
樹「あのさ、」
樹が何か言いかけた時私の携帯が鳴った
でも今は樹の話を聞きたい
そう思って私は樹の方を見た
樹「電話出なよ。また後で話すから」
そう言って困ったように笑った
「ごめんね」
そう言ってから携帯を手にすると
電話の相手は滝沢くんだった
滝沢『あ、葵?』
「お疲れ様です」
滝沢『おつかれ。すごく急なんだけど今から場所送るからそこに来てくれる?』
「今からですか?」
滝沢『うん、急で申し訳ないけどよろしくお願いします』
「わかりました」
電話を切ると樹が心配そうにこっちを見た
多分ちょっとだけ声が聞こえたんだろう
「樹、ごめん」
樹「大丈夫大丈夫、また来るわ」
「うん」
私は急いで出かける支度をして
樹と一緒に家を出た
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。