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第9話

小さな城の姫
1,443
2021/03/02 13:00
「 だ 、 旦那様そんな事を言っては … … 」


男は慌てた様子でハイラの言葉を止めようとした 。


「 お前は私の生贄だ 。 私にはお前を自由に使う権利がある 」


主の低く通る声に空気は凍り 、 誰も声を出せなくなった 。

幼女はその低く通る声を小さな身体で感じ 、 不安を誤魔化すように唇を甘く噛んだ 。


「 アンジュ 、 お前は今日から私の娘だ 」


予想外の言葉に誰もが驚き 、 下に向いていた視線が一瞬でハイラの方に向けられた 。


「 今日からこの屋敷がアンジュの家だ 。
アンジュ 、 お前の家族はこの私だ 」


冷たく氷のように鋭く感じられた声はいつの間にか優しく温かい声に変わり 、 ハイラは優しい眼差しでアンジュを見た 。


『 こ … このお城で住んでいいの ? 悪魔さんが家族になってくれるの ? 』


幼女は顔を上げハイラの赤い目を見て言った 。


「 あぁ 。 家族 … … 父になろう 。
この屋敷を城と言うならアンジュはこの城の姫だ 」


幼女の真剣な眼差しにハイラは頷くと少しだけ優しく微笑んだ 。


『 お父さん … お姫様 … 』


幼女は涙を滲ますと噛み締めるように呟いた 。


そして天使は椅子から降りると少し前の方で座る父の元へ走り抱きついた 。


『 ありがとう … !
私のパパになってくれてありがとう … 』


服を涙で濡らす天使にハイラは優しく頭を撫でてあげた 。


「 娘になってくれてありがとう 」

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