村人は森を少し入ったところで馬車から幼女を下ろすと
「 あの城を目指して歩け 。 元来た道を戻ってはならない 。魔物に喰われるぞ 」
そう言い残して 、 元来た道を帰って行った 。
幼女は木の間から微かに見える城の方を目指して薄暗い森の中を歩いた 。
怯えながらも一言も喋らずただただ道を歩いた 。
気付けば東の方で少しだけ顔を出していた太陽は西の方に沈みかけ 、 幼女は悪魔の住むとされる城の前まで来ていた 。
最期が近いということを分かっていても幼女にはその城はとても大きく 、 綺麗に見えた 。
『 す … すみません ! だ … 誰か居ませんか ! 』
幼女は震える体に鞭を打ち精一杯の声で扉の向こうに問い掛けた。
到底聞こえるはずもない小鳥のような声で。
「 あれ ? これはこれは小さなお客様 。
どうかなされましたか ?」
少し経つと意外にも扉は開き 、 扉の向こうからはシルバーグレーの髪を首元で緩く結え 、 目は少し垂れ肌は程よく白い燕尾服を着た男が出てきた。
男は幼女を見ると幼女に目線を合わせるように座った 。
『 あの … えっと … 』
城から出てきた男を見ると幼女は後ずさり下を向いた 。
「 道に迷われましたか ?
ここから近い村までお送りしましょうか ? 」
男は怯える幼女に優しく声を掛けた。
『 その … あ … 悪魔さんの … い … 生贄で … その … 』
「 生贄 ? 成程 … どうぞ中にお入りください 。
この家の主の部屋へお連れ致しましょう 」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。