そして藍沢先生は向日葵と家に帰ってきた。
それから2人でご飯を食べた。
いつもは白石先生もいて3人でご飯を食べるのだが今日は白石先生が当直。
向日葵「はーー……。」
藍沢「向日葵、大丈夫か?」
向日葵「……………。」
藍沢「大丈夫じゃないよな?」
向日葵「あ、お兄ちゃん。私、大丈夫だよ?」
藍沢「俺には大丈夫には見えない。白石みたいに無理をしているように見える。」
向日葵「お兄ちゃんには嘘つけないよ……。辛いよ……泣……赤ちゃんの命も助けたかった……泣」
藍沢「向日葵、よく患者の前で泣かないで頑張ったな。……でもな…救命には奇跡はあまりない……。それにいずれ分かるようになるが、患者の命を諦めるということも必要になる。……俺たちの仕事は人の命を扱っている分辛いんだよ……」
向日葵「うん……」
藍沢「でも今まで向日葵が頑張って来たのを俺はちゃんと見てきた。辛すぎて嫌なら医者を辞めてもいい。向日葵の人生は向日葵のものだから沢山悩んで苦しんでやりたいように生きろ。いつでも俺は向日葵の味方だからな。」
向日葵「うん。ありがとう、お兄ちゃん。」
一方こちらも冴島さんが夜勤のため2人でご飯の支度をしている。
紫陽花「ふーー……。」
藤川「どうした?紫陽花。」
紫陽花「ん?何でもないよ。」
藤川「助けられなかった赤ちゃんのことか?」
紫陽花「うん……。赤ちゃん助けたかった……泣」
藤川「これだけは仕方がないんだ……。」
紫陽花「どうして?」
藤川「医者は神じゃないんだ。助けたいって気持ちがあっても必ず失ってしまう命はあるんだよ……。はるかの時も緋山が一生懸命助けたいってやってくれたけど結局ダメだった……。医者は無力なんだ…。辛い仕事だよな……。」
紫陽花「うん……」
藤川「紫陽花が辛すぎて続けるのが嫌なら医者を辞めてもいいんだよ。紫陽花の人生は紫陽花のものだからどんなに迷って壁にぶちあってもやりたいように生きていけばいいんだよ。」
紫陽花「うん。ありがとう、お兄ちゃん。」
次の日。
今日は藍沢先生と初フライト向日葵がヘリ担当。
藍沢「向日葵、心の方は大丈夫か?」
向日葵「うん。昨日、ずっと考えてたの。私はどうしたいのかって……。」
藍沢「ああ。」
向日葵「私、医者続ける。辛い仕事だけど私は1人でも1つでも多くの命を救いたい。」
藍沢「そうか。」
向日葵「うん。」
藍沢「そういえば今日、初フライトだよな?緊張してるか?」
向日葵「緊張してるよ。でもお兄ちゃんと一緒だから、大丈夫。……そろそろ出ないと遅れちゃうね。」
藍沢「ああ。」
一方こちらは……
藤川「紫陽花、大丈夫か?」
紫陽花「うん。今日ね、私はどうしたいのかずっと考えてたんだ。」
藤川「うん。」
紫陽花「私、やっぱり辛い仕事だけど医者続けたいって思った。医者続けて毎日救える命を救いたいって思ったんだ。」
藤川「そっか。」
紫陽花「お兄ちゃん…私、お兄ちゃんと一緒なら頑張れるよ。あ、そろそろ出ないとね。」
藤川「そうだな。」
そして今日も向日葵と紫陽花は患者が運ばれてくるたびに命と向き合い、救える沢山の命を救うのでした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。