朝7時過ぎ。
サンドイッチを持ってオフィスに行くと、何やら皆さんが話し込んでいた。
前髪がびしょびしょな山本さんが熱弁している。
道理で、少し早い時間だというのに全員起きているわけか。
須貝さんがタオルを持ってきて山本さんに差し出した。
ちょっと気になるけど……。
大部屋に集まった一同。
あなたは部屋の真ん中に積み上げられた荷物を下から上まで見て、少し考え込んだ。
あなたは何か呟きながら右腕を動かした。
すると荷物はパッと姿を消した。
僕らをぐるりと見回す。
一瞬目が合った。心臓が存在を主張するように大きく跳ねる。
河村さんが部屋から出ていく。
少しして河村さんがたくさんのカーテンを抱えて戻ってきた。
建物の外に出る。
空はすっきりと晴れていて、雲一つない。
道の脇に並ぶ桜の花は少しずつ綻びだして、風は春の匂い。
あなたは車道にカーテンを広げて、上を歩きながら何か呟いている。
全部広げたカーテンはちょっとした六畳間くらいの広さだ。
乾さんが先陣を切って黒いカーテンの端に乗った。
カーテンが音もなく、静かに20cmほど浮かび上がった。
再びカーテンがアスファルトの上に降りる。
僕らはぞろぞろとカーテンの上へ移動し、座りこんだ。
6畳間くらいの広さに11人。
確かにやや狭い。
あなたはカーテンの短辺、ちょうど僕の真反対のところに座って腕を持ち上げた。
静かにカーテンが、3mほど浮かぶ。
……初日におんぶしてもらって飛んだ時よりもだいぶ安定している。
カーテンは滑るように進み出した。
あなたの髪が風になびいて、春の日差しを反射する。
みんながはしゃいでいるのを聞きながら、僕は少しずつ眠くなってきた。
連日の疲れと乗り心地の良さのせいだろうか。
隣の問ちゃんの肩にもたれながら、いつの間にか眠ってしまった。
問ちゃんの声で意識が戻ると、みんなの声が聞こえてきた。
体を起こしてみんなのところへ向かう。
木立の中にある小ぢんまりとした一階建ての旅館。裏庭が広いみたいだ。
玄関の戸をカラカラと開けると、早くもみんなは荷解きを始めていた。
慌ただしい。
僕と問ちゃんの部屋は、7つ並んでいるうちの右から2番目の部屋だ。
ふすまを開けると8畳間の和室の中に机と座椅子が置かれていた。
障子を開けると縁側があり、外には風情のある日本庭園が広がっている。
ひと通り荷解きを済ませて広間に戻ると、ふくらさんと伊沢さんがデスクトップパソコンをセッティングしていた。
広間を出てすぐ左の部屋に声をかける。
ふすまが開き、河村さんが顔を出す。
荷解きはだいたい終わっているようだ。
河村さんが出て行き、それと入れ替わるかのようにあなたが廊下を歩いてきた。
すると部屋の中にいた鶴崎さんが答えた。
あなたは小走りに広間へ向かって行った。