第16話

15.民族大移動
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2024/04/22 10:34
あなた
おはようございます
朝7時過ぎ。

サンドイッチを持ってオフィスに行くと、何やら皆さんが話し込んでいた。

前髪がびしょびしょな山本さんが熱弁している。
山本祥彰
ほんとに見たんだって!!
見間違えじゃないんすか?
あなた
どうされたんですか?
河村拓哉
あ、おはよう。山本がお化け見たって言っててさ
あなた
お化け?
山本祥彰
そう。さっき顔洗ってたらさ、鏡の中に青白い顔の人が見えて……!
ノブ
で、叫び声を聞いてみんな集まってきたんだよね
道理で、少し早い時間だというのに全員起きているわけか。
須貝駿貴
ほら、顔拭き
須貝さんがタオルを持ってきて山本さんに差し出した。
東問
あ、それ朝ごはん?食べよー!
あなた
あ、はい。サンドイッチですけど……
ふくらP
もう怖い話するのやだからご飯にしよー?
あなた
はい……
ちょっと気になるけど……。
山本祥彰
ねえ、だからほんとにいたんだって!怖かったんだよ!?
須貝駿貴
うん、怖かったなー。もう大丈夫だから






伊沢拓司
さて、引っ越しだ!
大部屋に集まった一同。

あなたは部屋の真ん中に積み上げられた荷物を下から上まで見て、少し考え込んだ。
あなた
……うーん、このくらいなら瞬間移動させられますね。もうやっちゃいますよ?これで全部ですね?
ふくらP
うん、お願いしまーす
あなたは何か呟きながら右腕を動かした。

すると荷物はパッと姿を消した。
あなた
はい、建物の中に入れておきました
鶴崎修功
すげ〜
あなた
えーっと、じゃあ……
僕らをぐるりと見回す。

一瞬目が合った。心臓が存在を主張するように大きく跳ねる。
あなた
——みなさんはどうやって旅館まで行きますか?一緒に空飛んで行きます?
伊沢拓司
空飛んでみたいな。でもこんなに大人数いて大丈夫?
あなた
万一落ちたりした時に、人が多すぎると対応できないので……、安全のためにも3人ずつくらいですかね。それか、低いところをゆっくり飛べば全員一緒に行けますが
ふくらP
えーと、どっちの方が早いんだ?早く飛ぶのとゆっくり飛ぶのってそれぞれどんくらいの速さ?
あなた
早く飛んだら片道30分、ゆっくり飛んだら……1時間半くらいですね。戻ってくる時は瞬間移動できます
ふくらP
じゃあ合計はあんまり変わんないのか。あなたちゃんはどっちがいいとかある?
あなた
んー、どちらかと言えばみんなで行きたいです
ふくらP
よし、じゃあそうしよっか
河村拓哉
あ、この前のカーテン、まだ余ってるから持ってくるよ
あなた
ありがとうございます
河村さんが部屋から出ていく。
伊沢拓司
よし、じゃあ俺らは準備して……って言っても何もないか
須貝駿貴
荷物全部向こうにやっちゃったしなw 待ってよー
少しして河村さんがたくさんのカーテンを抱えて戻ってきた。
山本祥彰
あ、半分持つよ
河村拓哉
ありがとう。多分これで足りると思う
あなた
ありがとうございます、それでは行きましょうか
建物の外に出る。

空はすっきりと晴れていて、雲一つない。

道の脇に並ぶ桜の花は少しずつ綻びだして、風は春の匂い。
とむ
いい季節ですね〜
ノブ
ね。もうちょっとしたらお花見とかしたいなー
あなたは車道にカーテンを広げて、上を歩きながら何か呟いている。

全部広げたカーテンはちょっとした六畳間くらいの広さだ。
あなた
……よしっ。乗ってみてください
あ、はーい
乾さんが先陣を切って黒いカーテンの端に乗った。
あなた
浮かせますよ。……
カーテンが音もなく、静かに20cmほど浮かび上がった。
お、浮いてる?すごー
あなた
いい感じですね。じゃあ皆さん、乗ってください
再びカーテンがアスファルトの上に降りる。

僕らはぞろぞろとカーテンの上へ移動し、座りこんだ。
あなた
ん……、ちょっと狭いですか?
6畳間くらいの広さに11人。

確かにやや狭い。
あなた
まあいいか。大丈夫ですか、皆さん?
一同
はーい
あなた
よし、行きますよ
あなたはカーテンの短辺、ちょうど僕の真反対のところに座って腕を持ち上げた。

静かにカーテンが、3mほど浮かぶ。

……初日におんぶしてもらって飛んだ時よりもだいぶ安定している。
河村拓哉
おおー
とむ
すごい、ほんとに飛んでますね!!
東問
けっこう静かなんだね
あなた
はい。あまり高く上がると危ないので、一旦このぐらいの高さで道沿いに行きます
カーテンは滑るように進み出した。

あなたの髪が風になびいて、春の日差しを反射する。
東言
……
鶴崎修功
すげ〜。テンション上がるねェー
伊沢拓司
ほんとに魔法なんだな。ちょっとEVっぽいけど
みんながはしゃいでいるのを聞きながら、僕は少しずつ眠くなってきた。

連日の疲れと乗り心地の良さのせいだろうか。

隣の問ちゃんの肩にもたれながら、いつの間にか眠ってしまった。






東問
……言ちゃん、起きてー
東言
……ん
問ちゃんの声で意識が戻ると、みんなの声が聞こえてきた。
ノブ
いい雰囲気だねー!古民家というか。風情があるしきれいだ
山本祥彰
周りもいい環境だね。木漏れ日がきれい
須貝駿貴
仕事はかどりそー
あなた
入り口、こっちです
東言
……あれ?もう着いた?
東問
うん、さっき。ぐっすり寝てたねー。僕もちょっと寝ちゃったけど
河村拓哉
問言ー、早くおいでー
東言
はーい!
体を起こしてみんなのところへ向かう。

木立の中にある小ぢんまりとした一階建ての旅館。裏庭が広いみたいだ。

玄関の戸をカラカラと開けると、早くもみんなは荷解きを始めていた。
あなた
あ、おはようございます。部屋は多分、ふくらさんが……
ふくらP
問と言は右から2番目の部屋ねー!この箱持ってって!
東問
はい!
とむ
私の黄色い鞄誰か知りません?
鶴崎修功
あ、こっちにあるよー
須貝駿貴
あれーこれ伊沢の?持ってっとくよ?
伊沢拓司
ありがとう!俺この機材出しとくよ
山本祥彰
あ、河村さん、それ持つよ
河村拓哉
ありがとう。部屋までお願い
慌ただしい。

僕と問ちゃんの部屋は、7つ並んでいるうちの右から2番目の部屋だ。

ふすまを開けると8畳間の和室の中に机と座椅子が置かれていた。

障子を開けると縁側があり、外には風情のある日本庭園が広がっている。
東言
よいしょ
東問
僕の服こっちに入れるからー
東言
あ、じゃあ僕はこっちだね。……でも荷物服とパソコンくらいだし
東問
いやーなんか懐かしいねーこういう部屋。ちっちゃい頃に行った旅館みたい
東言
あれね。僕も思い出してた
ひと通り荷解きを済ませて広間に戻ると、ふくらさんと伊沢さんがデスクトップパソコンをセッティングしていた。
伊沢拓司
……よし。これでできたな
東問
あ、終わっちゃいました?
ふくらP
ちょうど今ね。そんなに大変じゃなかったけど。データの確認したいから河村呼んできてもらってもいいかな?
東言
はーい
広間を出てすぐ左の部屋に声をかける。
東言
河村さん?
河村拓哉
はいはい
ふすまが開き、河村さんが顔を出す。

荷解きはだいたい終わっているようだ。
東言
ふくらさんが、パソコンの確認してほしいから来てくれって言ってました。広間です
河村拓哉
わかった、ありがとう
河村さんが出て行き、それと入れ替わるかのようにあなたが廊下を歩いてきた。
あなた
不都合ないですか?
すると部屋の中にいた鶴崎さんが答えた。
鶴崎修功
大丈夫!いい部屋だねここ、ありがとう
あなた
恐れ入ります。どうぞごゆっくり……と言っても私の家じゃないですけどねw
伊沢拓司
あなたちゃーん!ちょっと来て!
あなた
はーい!
あなたは小走りに広間へ向かって行った。

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