今日は私の友達、
天馬莉穂の家に来ている。
莉穂の家は高級住宅街の端っこにある。
…とにかく家が大きい。
私そもそもマンションだし…
ちょっとだけ…いや、だいぶ憧れる。
私は洗面台で手を洗ってリビングへと向かう。
莉穂が顔を少し赤らめる。
友達の家に行ったはいいけど、
何をすれば良いんだろう…
莉穂がレモンティーの入ったグラスを二つ持ってくる。
また唐突に…😅
恋バナかぁ…そういうのしたことないなぁ
莉穂がそう私の耳に囁く。
好きな人かぁ…
そう言っていた時、玄関のドアがガチャっと開いた。
莉穂のお兄さんとは別の声が聞こえた。
莉穂が顔を赤らめる。
「こうちゃん」って…莉穂の好きな人のことかな
莉穂のお兄さんが私に目を向けた。
私はぺこりと頭を下げる。
浩介さんが私に微笑む。
莉穂が私に抱きつく。
そう言って莉穂のお兄さんは優しい顔をして莉穂の頭をなでる。
いいなぁ、莉穂は。家に帰ったら優しい人が待っている。
けど、私は…
私は慌てて笑顔を作る。
マリカかぁ…小さい頃、よくお隣さんの相澤怜央とやってたなぁ〜
私はいつも家でひとりだったため、よく怜央の所へ行って遊んでいた。
でも最近は行ってないな。
その後何回もやって、時間がどんどん経っていった。
私の両親は私に全く興味がない。
中学の時、私は一回何日か無断で家に帰らなかったことがある。公園で何日も過ごした。
でも、それでも両親は連絡もしてこなかった。
親に見捨てられたんだな、と分かった。
元々いつも殴られたり蹴られたりしてたからわかっていたけど、今回は確信した。
中学の頃はリスカや自殺行為を沢山していた。
自分を好いてくれる人は誰もいないから。
でも、今はこうして、そばに居てくれる人がいる。
それが本当に嬉しかった。
ここにずっといたい、なんて思ってしまった。
私の家になんて楽しい物は何もない。
あるのは、寂しさだけ。
そういうことで、駅まで莉穂のお兄さんに送って貰うことになった。
そう言って恭くんが私の頭をなでる。
これは癖…なのかな。
すると恭くんが私のうでを掴んで袖をまくる。
私の腕には沢山のリスカの跡。
今でも時々やってしまう。
何も言えなかった。唇を噛む。
すると、恭くんが無言で私の頭を撫でた。
その暖かい手に安心したのか、涙が出てくる。
すると恭くんが私の涙を親指で拭った。
それからは私達は無言で駅に向かった。
隣を歩く恭くんの姿がとても暖かく見えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。