他の学生に紛れつつ歩きながら
「 一成、今のなに? 」
そう声を掛けると、彼はピタッと立ち止まった。私のお顔を見下ろすと、ほんのりとほっぺを赤く染めて
「 は?今の?
キスだよ、キス
高校生なんだから知ってるだろ 」
「 そうじゃなくて
どうして瞼にキスしたの?私を泣かせたから? 」
「 だから、
それは…
大切って気が付いたんだよ
最近お前がやたら可愛く見えるから、なんで可愛いんだろうって拓実に聞いてみたら「 お前に飽きて、お前の他に好きな男が出来たからじゃない?」って言われて…
それで、なんか、いろいろ…
あぁ、そうなのかなぁって勝手に凹んだりもして…
で、さっき一緒にいた部活の女の先輩にこの間相談してみたら、名前を思ったよりも思ってるからなんじゃないかって言われて…
それでお前が最高に大切って気が付いた。
お前が欲しいっていうのも…すっごい浮かんでくる。
どうしても…欲しい
だからどうやったらお前と幼馴染っぽい恋人を卒業できるかっていろいろ考えて、昨日も今日も俺なりに求愛してみたんだよ。別の角度から
ほら、引いて押してってやつ」
「 あ、あれが求愛? 」
あの変な、欲望のままに生きていますっていう感じのアレが?
あの変な、俺はお前を使って女の子を口説く練習をしてますっていう感じのアレが?
引いて押してってつまり、冷たくしたり優しくしたりってこと?
あんなのがまともな求愛なら、世の中の男性達の求愛はきっと異常で溢れてる。でも一成が変なだけかな…
「 なのに
昨日も今朝も、シナリオ通りにいかなくて…
だいたい、昨日はお前があんなに怒るなんて思わないし、嫌いだって言われたのも…ショックだった。
今朝だっていつもの時間より早かっただろ?
あれ、絶対俺を避けて高校に行くつもりだったんだろ?
映画だって、せっかくお前の好きなラブストーリーのを誘ったのに 」
「 だって、一成
そんなに私のこと大切だったの? 」
「 だからそう言ってるじゃん… 大切って 」
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