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第56話

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2021/03/21 03:03






朝起きたら何もかもが元通りで、またいつもと変わらない日々が始まる…
なんて、漫画みたいな展開がないことくらい承知してる。





昨日の夜は泣き過ぎて、まぶたはパンパンに腫れてしまっているし、喉もガラガラ


出来ることなら高校を休んでしまいたいくらい。でも、単位のためにそんなのこと出来なくて…




ただ、一成に出会わないようにいつもより10分早く朝の準備を済ませて玄関に降りた。





ブーツを履いて、リュックを背負い直したら

「 あら、もう行くの?いつもより早くない? 」




「 そうかな?10分だけだよ 」





玄関まで見送りに来てくれたママには突然こんな事を言われるし…
勘の鋭いパパには瞼の異変を感じ取られたのか、食卓についてお箸を持つより早く
「 一成と喧嘩でもしたか? 」って聞かれてしまった。





一成に会いたくない…でも、いつも通りの朝が来るのなら会いたい…


恐る恐る玄関の扉を開くと






















へ?





「 おはよう、あなた 」



「 お、おはよう? 」









玄関の扉を開くと、まるで飼い主のお出ましを待ち構えていたかのように玄関の前に立っていた一成。鼻の頭がほんのり赤いのは寒い中外で私が出て来るのを待っていたせい?
なんて、あるわけないよね。きっとアレルギーだよ。この時期でも花粉症に悩んでる人はたくさんいるもの。






それより、なんで?


私達、昨日絶縁したんだよね?


なのにどうしていつも通り一緒に高校に行く感じなの?








ううん、いつもと違う…


いつもなら私の方が一成より先にお家を出ていて、私の指が一成のお家のインターホンを鳴らすんだから。それに、時間だって今朝は10分早いはずだよ?




自分のお部屋の壁にかかったまぁるい時計の時間が遅れているわけじゃないのはしっかりと腕時計で確認した。だとしたら、一成はやっぱり私を待っていたの?




仲直りをするため?
でも、全然そんな感じがしない。




一成は綺麗過ぎるお顔を、朝陽の下で完璧に整った笑顔に作ると



「 ほら、行こう 」

って手の平を差し出した。







ただ彼の手の平を見つめたまま動けない私。そんな私の手を一成は無理矢理握り締めると、駅へと向かうべく脚を進めた。




たとえ手袋越しといえど、手を繋いでいる相手は昨日私をふってきた人。
本当なら心臓はドキドキで暴れ回っているはずなのに…今朝の一成には全然ドキっともしない。


ただ、私は指先を添えるだけ。
それでも彼の手は固く結ばれていた。






一成を追いかけるみたいに私も自然に早足になってしまう。それはまるで大きくて力の強い飼い犬にリードをグイグイと引っ張られて、ふらふらと引き摺られている飼い主さんみたい。


彼は乾いた風を切り裂くようにどんどんと前へ進んでしまうの









「 一成ねぇ待って?もっとゆっくり歩いて? 」


いつもならちゃんと私の歩幅に合わせてくれるのに…こんな風にずんずん先へ急ごうとはしないのに

それに、私の声…全然聞いてくれない







「 一成っ! 」 





「 ん? 」







ぁっ、やっと止まってくれた…





ピタッと脚を止めた一成はこちらに振り返って…
また、少女漫画の王子様みたいに非の打ち所がない笑顔を見せる。



どうしちゃったの?
私、一成のこんな雑誌のモデルみたいな笑顔は好きじゃないよ?
もっと自然に笑っていたのに…





やっぱり、昨日のことがあるから?
でも… だったらどうして放っておかないの?
巨乳で美人で年上の女性を探さなくてもいいの?
私と一緒にいたら不都合だったんじゃないの?




聞きたいことは山ほどある
でも、その聞きたいことは反対に聞きたくないことでもあるから、口からはなかなか出ては来なくて…




一成の大きな漆黒の瞳を見つめたまま、2人で駅までの道を立ち止まったままでいたら、びゅぅぅぅって冷たい風が私の背中を押して。冷気が背中をすーっと登っていった。



「 くしゅっっ 」


「 あなた、寒いよな
待ってな?そこのコンビニであったかい飲み物買って来る 」


「 え?一成?いらないよ? 」






パッと繋いでいた手が離れたら、スッと手から温もりが消えて…


一成の瞳も視界から消え、代わりに制服の背中が現れて、それはすぐにコンビニへと走っていった。








一成の手ってあったかかったんだ
それに、とっても大きかった




男らしくてかっこいい手だっていうのは見ればわかるけど、実際触るとやっぱり違う。
硬くて、ゴツゴツしてるの。


本当に… 一成はかっこいい






すぐにコンビニの自動ドアが開いて、私の元へ戻ってきた一成。
左手には高校の教科書が詰まったバッグ。その反対の手には、冬になると定番のコーンスープの缶。
彼はそれを私の手にキュッと握らせた。




一成?
どうして優しいの?




「 これで温まりな? 」






って…コーンスープよりトロッとした低音甘々ボイスを響かせた。


それはまるで


女の子を口説くような…




思わず両手でコーンスープの缶を握り締めると、一成は今度は手を繋ぐんじゃなくて肩に腕を回して


「 じゃあ、行くぞ 」


そう言ってから肩を抱いたまま歩き始めた。















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