一晩明ければ、昨日の出来事は全て夢だった。
なんて事には最終的にはならなかった。
昨日と同じように、高校が終わったら一成は隣の自分のお家には… 寄らずに、私のお部屋に上がり込んでいる。
でも、昨日とは違う事はちゃんとここにあって…
2人が腰を下ろしているのは私のベッド。
それから、一成の手は私の手をぎゅっと握り締めていて…ちゃんといつもの「 一成 」の笑顔を見せてくれている。
11月のカレンダーの今日の日付には、今度は別のシールを貼り付けた。ワンちゃんじゃなくて、ハートにしたの。2人の記念日だから
「 さっに気が付いたんだけど
カレンダーの俺の誕生日のとこに可愛いシール貼ってんだなお前 」
ふふっ、嬉しそう
「 うん、だって… 好きな人のお誕生日だもん 」
「 俺だってお前の誕生日にはちゃんと丸つけてるけど? 」
「 ふふっ、ありがとう 」
毎年日付が変わった瞬間にカトクを送ってくれてるもんね?もちろん一番乗りで
握られた手を私も同じくらいの力で握り返したら
「 やっぱさ、あのラブストーリーの映画、日曜に観に行くか 」
「 ぇ?いいよ、一成の好きなやつを観よう?アメコミのダークヒーローのやつ 」
「 なんで?ちゃんと彼氏彼女になってから初めてのデートだろ?ちゃんとあなた優先のデートプランにするから 」
一成 …
特別扱い、ちゃんとしてくれるんだ。
幼馴染の時とは違うって…伝えてくれてるみたい
すごく嬉しい。
でもね、私、ラブストーリーじゃなくていいんだよ?
だって、一成が観たい映画を観る方がずっと楽しいもん。終わってからカフェで映画の感想をお話するのが好きなんだから
「 じゃあ、当日映画館で選ぶね? 」
今決めちゃうと、絶対ラブストーリーでいい!って言い張るもんね?
「 オッケー。
じゃあ当日のお楽しみって事にしておく 」
肩を寄せ合うように座っているけど、彼は私の頭を引き寄せて、自分の肩にコツンっと乗せた。
こういう事されたら女の子はクラクラしちゃうって…きっとわかってないんだよね。ただ、一成の優しい気持ちから生まれた行動だから
一成の求愛行動はどう考えてもおかしいものね。
瞳を閉じて
彼の肩にずっと温めていた気持ちも預けたら、低くて甘い声がぽとんっと胸元に落ちてきた。
「 あなた…
昨日のアレ…
お前の事ブスとか、もっと美人で巨乳でセクシーな女の子がいいとか…みんな嘘だけど
でも、いっこだけ真実があるから 」
「 真実? 」
「 発情期ってやつ 」
「 … へ? 」
瞼をパチっと大きく開いて一成のお顔を見上げたら、彼の瞳は昨日と同様にランランときらめいていて…獲物を見つけた狂犬が舌舐めずりをするように、唇から舌を覗かせる。
とってもいやらしく…
「 発情期だから
あなたのこと、やっぱり抱きたい
いいよな… もう正直になれたんだから 」
「 なんで抱きたい理由を「好きだから」って言えないの!? 」
って突っ込みたいけど
でも
そんな言葉を閉じ込めるみたいに
私に「 好きだよ 」って伝えるみたいに
チャニョルは甘いファーストキスをくれたから…
こんなヘンテコな求愛にもちゃんと応えるね?
心の準備なんてしている暇はないの。
だって、もたもたしているうちに一成の発情期が終わったら困るもの。
キスをしながら私をベッドへと沈めていくチャニョルの背中にそっと手のひらを乗せて
「 全部あげる 」
そう伝わるように、優しく優しく撫でてあげた。
狂犬を飼い慣らすように
「 あ、でもただ抱くわけじゃないよ? 」
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