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第52話

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2021/02/27 14:00





















ん… 。


私、いつの間にか眠ってたの?







何度も激しく突かれたせいか、腰に鈍い痛みが走る。
それを慰める様にこすりながら瞳を開くと、







いない…







汐恩先生…








どうしていないの?











あれは夢?私の願いが作り出した虚しい幻?
でも、じっとりと湿ったシーツは夢幻じゃない事を教えてくれるけれど、






あなたのものになっても、目覚めた時にそばにいてくれないの?
寂しいよ…これじゃあ今までと同じ。またあなたの背中を見ていなくてはいけないの?





ぽろんっとビー玉の様な涙が頬を伝った時、ガチャッと扉が開いて。




いつも通り真っ黒なバスローブに、それと…
紙の束を持った汐恩先生。


「 あなた、目、覚めた? 」









あ、名前…
よかった。夢じゃない。私はちゃんとあなたのもの。




「 はい、あの、時間は… 」



「 まだ19時。どっか飯食いに行くか。
それより、



これ、お前に 」










ベッドに腰を下ろし、私の頬を優しく撫でる彼。もちろんとろける様な瞳で。








彼が差し出したのはプリントアウトされた明朝体が所狭しと並んだ紙。

小説?










細い指先がパチッとベッドサイドの電気をつけてくれた時、その小説の題名も浮かび上がる。









「 名前の無い恋人? 」



「 そ。あなたのこと 」




「 え?私? 」











彼の事をじっと見上げれば、恥ずかしいのかぷいっと顔を背けて


「 お前を抱いたあと、一心不乱に書いてたのはごてごての純愛小説。
でもこれは、お前が帰ってひっそり静まり返った部屋で一人お前を思いながら書いてた…




そうだな、純愛には程遠い、官能小説?」















ハハって細かく肩を震わせて笑う彼。



官能小説だなんて言っても、きっと愛が詰まってることは読む前からでもわかるの。









もぞっと腰を起こして、大切に大切に胸に抱いて。




「 ありがとうございます、汐恩先生。
あの、これ、私だけが読んでいいんですか?世に出さなくても? 」




「 当たり前だろ?お前の名前で書いた本だし、相手の男の名前も俺、鶴坊汐恩。
お前だけのストーリーなんだから、後生大切にしろよ? 」




「 はい。もちろんです 」

















素敵。
物語のプレゼントなんて、こんな素敵な贈り物、他にないよ。














彼との甘いディナーを終えて、一人アパートの部屋で
「 名前の無い恋人 」
の表紙をめくる。









そこには私との出会い
私との体だけの関係
それから、あの授賞式の事







その時々で彼がどう思い、私にどんな愛情を抱いてくれていたかも詳細に描写されていた。


もちろん可愛らしい嫉妬まで。

















ん?あら?
途中で終わってる?
たくさん、半分以上白紙だよ?
でも、私達が愛を伝え合って結ばれたところまでは書いてあるから…






もしかして、これって…














まだまだ俺達の物語は続く。そう言いたいの?






真っ白な紙面にはポタポタと水滴が。
それはなんの文字の形でも無いのに、ちゃんと物語として形成されているよう。



私だってこの物語の主人公。続きを書いてもいいよね?















お気に入りのボールペンは真っ白な紙にさらさらと愛を刻む。