第67話

眠ってる間
9,976
2020/02/29 10:11
壱馬side
あなた
うわあ…壱馬…
あなたと俺だけの空間になったこの部屋。

俺は何も考えずにあなたに抱きついた。

ただただ、嬉しくて、あなたに抱きついた。

あなたは俺の頭を優しく撫でた。
あなた
ごめん、ありがとう。
そう、優しく言いながら。

あなたは多分、死ぬ覚悟をしてたんだと思う。

だからあんな手紙を書いたんだ。
壱馬
壱馬
手紙。
あなた
もうあれいらないよね、捨てて。
壱馬
壱馬
お前、死ぬ覚悟してたの、
あなた
当たり前じゃん、それくらいしないとダンスなんて踊ってない。
そりゃそうか。

心臓悪いのにダンスを続けたあなたは、それなりの覚悟だったんだ。

時々見せる悲しそうな顔はそういう事なんだってわかって。
あなた
でもちゃんとリハビリして復帰するから。
壱馬
壱馬
おう。
あなた
待ってて、
壱馬
壱馬
早く帰ってこいよ。
あなた
うん。
壱馬
壱馬
あともう無理すんなよ。
あなた
うん。わかってる。
あなたのわかってると、うん、は意味の無い。

結局返事だけして、守らないのがあなただ。

俺はそういうあなたを見逃してきたけど、これ以上はもう…
あなた
ちょっと私が眠ってた間の話していい?
壱馬
壱馬
眠ってた間?
あなた
なんかね、違うところにいた。みんなとは違う、別の世界見たいな。
壱馬
壱馬
なんだよそれ。
あなた
私にもわかんないよ。最初は死んだんだって思った。
壱馬
壱馬
あなた
でも、その世界の空はピンクで、景色は全部ひまわりだった。
壱馬
壱馬
それって…
あなた
翔太だよね。私も思った。翔太って呼んでも翔太は姿を現さなくて。でも声が聞こえた気がしたの。あなたはまだこっちに来ちゃダメって。
壱馬
壱馬
そう…なんだ。
あなた
でももう私死んじゃうって言い返したら怒られちゃった。俺の分まで踊るって言ったの誰って。
あなたは、翔太くんが病気だった頃、翔太くんの分も踊ると約束してた。

それを力にずっと頑張ってたんだ。

そりゃ怒られて正解だよ。
あなた
みんな待ってるから、早く帰んなって。強い口調だったけど、それがきっと翔太なりの優しさだよね。
壱馬
壱馬
よかったな、翔太くんに会えたじゃん。
あなた
翔太に会えるならまた眠っててもいいかな〜。
壱馬
壱馬
お前、許さねえよ。
あなた
嘘嘘、冗談。
いつもみたいに微笑んで冗談と言う。

こいつは、冗談ばっか言って、翔平が間に受けて、って、面倒ばっかしてたっけ。
あなた
翔太と約束したから。私は生きるって。
そう簡単に死なないようにしないと、そう言った。

そう簡単に死なせねえよ、俺が。

絶対生かす。
あなた
ペースメーカー入ったからダンス踊れると思う。でも体が動くかどうかだよね。
壱馬
壱馬
リハビリしっかりしろよ。
あなた
うん。この話二回目。
それから、あなたが眠ってた間の話をした。

ファンに公表したこと。

ツアーはもうとっくに始まってること。

…俺らに活気がなくなってたこと。
あなた
私がいないだけでそんなになるんだ。
壱馬
壱馬
俺は普通だったけど。
あなた
北人から聞くからいいです。
どうせ寂しかったんでしょ。

そう笑って言った。

ああ、寂しかったよ。

お前の存在がどれだけでかかったか、身にしみて感じたよ。
あなた
でも、仕事に支障をきたすのはよくないね。
壱馬
壱馬
もうとっくに聞いてんじゃん。
あなた
私が眠ってても毎日懲りずに日記みたいにLINE送ってきたからね、あの豚わ。
北人、そんなことしてたんだ。

俺がやればよかった。←
あなた
壱馬、明日仕事でしょ?早く家帰って寝なよ。
壱馬
壱馬
うん、そうするけど。
あなた
なに?
最後にあなたをもう一回、抱きしめた。

今日は何も言わずに抱き締め返してきた。
壱馬
壱馬
愛してる、
あなた
なに急に。
壱馬
壱馬
あなた
私も愛してるよ。
久しぶりのあなたは、やっぱり、綺麗だった。
翔吾
翔吾
どうしよう、これ出る幕無し?
北人
北人
すっごいいらいらして扉割れそう。
翔吾
翔吾
北人我慢しろ…

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