壱馬side
あなたと俺だけの空間になったこの部屋。
俺は何も考えずにあなたに抱きついた。
ただただ、嬉しくて、あなたに抱きついた。
あなたは俺の頭を優しく撫でた。
そう、優しく言いながら。
あなたは多分、死ぬ覚悟をしてたんだと思う。
だからあんな手紙を書いたんだ。
そりゃそうか。
心臓悪いのにダンスを続けたあなたは、それなりの覚悟だったんだ。
時々見せる悲しそうな顔はそういう事なんだってわかって。
あなたのわかってると、うん、は意味の無い。
結局返事だけして、守らないのがあなただ。
俺はそういうあなたを見逃してきたけど、これ以上はもう…
あなたは、翔太くんが病気だった頃、翔太くんの分も踊ると約束してた。
それを力にずっと頑張ってたんだ。
そりゃ怒られて正解だよ。
いつもみたいに微笑んで冗談と言う。
こいつは、冗談ばっか言って、翔平が間に受けて、って、面倒ばっかしてたっけ。
そう簡単に死なないようにしないと、そう言った。
そう簡単に死なせねえよ、俺が。
絶対生かす。
それから、あなたが眠ってた間の話をした。
ファンに公表したこと。
ツアーはもうとっくに始まってること。
…俺らに活気がなくなってたこと。
どうせ寂しかったんでしょ。
そう笑って言った。
ああ、寂しかったよ。
お前の存在がどれだけでかかったか、身にしみて感じたよ。
北人、そんなことしてたんだ。
俺がやればよかった。←
最後にあなたをもう一回、抱きしめた。
今日は何も言わずに抱き締め返してきた。
久しぶりのあなたは、やっぱり、綺麗だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。